パラドックスガール
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あ、音が止んだ。
もう弾かないのかな。


「玲央?!」


横から名前を呼ばれ、驚いてそちらを向いた。
そこには同じくらい驚いた顔をしてる彼女。


「何してるの!早く入って」


無理矢理手首を掴まれ、僕を引きずるように家へと招き入れる。


「なんでそんな格好で外につったってるのよ。」


玄関の戸を閉めると、彼女はバスルームに一直線。
パタパタと戻ってきて、僕の頭にバスタオルをのせた。


「びしょぬれじゃん。何してたのよバカ」


そうブツブツ言いながら問答無用で僕の頭を拭きだした。
少し背伸びした爪先が、僕の髪に埋める細い指先が、切ないくらい愛しい。


「雨降ってきて濡れたからどうしようかなぁって迷ってたんだよ。
茗子、雨嫌いでしょ。」


茗子の頬に触れる。
温かくて、冷えきった僕の指先には熱いくらいに感じられた。



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