穢れなき雪の下で
俺は一呼吸置いて笑って見せた。

彼女が好むであろう、甘い笑顔。


道行く見知らぬ女性が足を止めてこっちを見ているが、そういうことは気にしないでおこう、あえて。


「俺は別にいいけどさ、ミユ。
 こんな日に俺と一緒にその店に行ったら、ミユは俺と付き合ってるって思われるんじゃないの?
 相手はちっとも罪悪感なんて感じないよ、きっと」

「別にいいもんっ」

と、一瞬勢いだけで返した彼女だが、さらに一呼吸置いた後

「――そっか――
 そうだよね――」


と、小さく呟いて、急にその可愛い顔から怒りの表情を消して、視線を足元に落とした。
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