カエルと魔女の花嫁探し
『お礼にオイラの宝物を渡したいんだけど――』

「いらないわよ。もう報酬は貰ったから」

『え? 誰から?』

「あの娘からよ。あの娘や王子の幸せそうな笑顔が見られたから、それで十分」

 そう言ってセレネーはウィンクした。
 こんな所に金銀財宝があっても邪魔になるし、お金がなくてもやりたい事は十分できている。そもそも元から金品には興味がない。

 自分にとっての報酬は――助けた者が幸せになる事。

 他人の幸せそうな顔を見るのが好きなのだ。
 魔女仲間の間でも「そんなことしても、得しないじゃない」と呆れられ、アクの強い魔女たちの中でも一番の変わり者だ、というのがもっぱらの評判だった。

 セレネーは小さく笑ってから、「でも」とネズミに尋ねた。

「あの娘、結婚しちゃったんでしょ? アンタはそれでよかったの?」

『オイラはあの娘が幸せになってくれれば、それでいいんだよ。見返りなんか欲しくないし』

 強がりかな? と思ってセレネーがネズミに視線を戻すと、彼は清々しい顔で胸を張り、目を閉じて上を仰いでいた。

 このネズミが特別という訳ではない。
 人間以外の動物は、みんな似たような考えを持っている。

 損得ではなくて、自分が気に入るか、気に入らないか。要は本能にとても忠実なのだ。

「そう。アンタも幸せならよかったわ」

『へへへへ……』
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