カエルと魔女の花嫁探し
 口元に手を当てて、セレネーは考え込む。
 色々と考えて出た結論は――。

「悪いけどそのお姫様、王子の事を愛していなかったんじゃない?」

 ポカン、とカエルの口が開きっぱなしになる。
 そして弾けたように首を激しく振った。

「そんなハズはありません! 姫は私が何者であっても好きだと言ってくれました。もし王子ではなく、ただの村人だったとしても構わないと……」

「言うは易し、ね。じゃあキスしたけど王子が元に戻れないって分かった時、お姫様はどうしたの?」

「……嘘つき! と言って、私を掴んで木に投げつけました。当然ですよね、結果として私が嘘をついてしまったようなものですから」

 話を聞いて、セレネーはネズミと見合わせる。
 どちらの口端もヒクヒクと引きつっていた。

『うわー、ネズミのオイラでさえ分かることなのに……世間知らずな王子だな』

 セレネーも同意見なので「そうね」と小声で相槌を打ってから、息を吸い込んだ。

「ひとつ聞くけど、王子は愛した人の姿が戻らないからって、突き飛ばしたり叩き潰したりするの?」

「まさか! なぜ元に戻らないのだろうと悲しむとは思いますが、他の方法を一緒に考えると……あ」

 ようやく鈍いカエルも気づいたようだ。
 セレネーは渋い顔をしてうなずく。

「つまりそういう事。本当に王子を愛していたなら、少なくとも木に投げつけるなんてマネはしないわよ。薄っぺらい口先だけの愛じゃあ、王子の呪いと釣り合いが取れないわ」

「そうだったのですね……分かりました。また最初からやり直します」

 そう言ってカエルは肩を落とし、セレネーたちに背を向けて立ち去ろうとした。
 哀愁が漂う小さな背中を見て、セレネーは顔をしかめた。
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