魔王と王女の物語
エリノアがコハクと何をしていたかをもちろん知っているリロイは、

マントを揺らして立ち上がると、しょげている姫の前に片膝を折って、たおやかな白い手を取った。


「非礼をお詫びいたします。お城へは戻るのですか?」


「いえ…戻ってももう父も母も他界しているでしょう。私は独りでここで暮らして行きます」


そう言いながらも階段につながる扉を見てしまうエリノアは完全にコハクに骨抜きにされていて、

ラスのことを“大切だ”と言いながらもすぐ女に手を出す性質の悪い魔王をぶん殴ってやりたいと思いつつ、

エリノアに頭を下げて立ち上がり、ずっと黙っているティアラの手を取った。


「1階に小さな小部屋があります。ベッドもあるのでそちらでお休みになって下さい」


笑顔でそう返してティアラを案内したが…


その部屋は…ベッドが1つしかなかった。


――案の定2人がフリーズしてしまい、リロイが後ずさりをして部屋から出る。

ティアラが振り返ると目が合って、2人共真っ赤になってしまった。


「あ、あの…リロイがベッドを」


「いえ、ティアラ王女はベッドをお使いください。僕はそこのソファで大丈夫ですから」


何とか横になれるサイズの白いソファが窓辺に置いてあって、そこでマントを取り、白銀の鎧を脱いだ。

ラフな格好になったリロイは若くも隊長らしくすらりとした手足と、薄手の服の上からもわかる胸の筋肉が見えて、真っ赤になりながら顔を逸らした。


「ら、ラスと魔王は今頃どうしているでしょうか」


「…魔王はラスの影です。魔王の城に着くまでは切り離せません。必ずホワイトストーンの欠片を見つけましょう。そして…」


「その魔法剣に石の加護を…そして…」


――魔王への包囲網を徐々に狭めてゆく。

本体に戻ってしまえば、絶対的な力を取り戻し、ラスを意のままにしてしまうだろう。

それだけは、避けなければ。


「あの…リロイ…同じベッドを使いましょう。私はその…平気ですから…」


「!てぃ、ティアラ王女…」


「お願いします、大丈夫ですから…」


――2人共緊張でまたフリーズしてしまった。


ぎくしゃくと、ベッドに近付く――
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