魔王と王女の物語
コハクは常にラスにべったりというわけではない。


朝ラスがまだ眠っている間に部屋を出て町へ出て、何か面白いものがないかとベルルと一緒に歩きながら欠伸をしていた。


「コハク様ってやっぱり変わりましたよねー。色ぼけなのは相変わらずだけど」


「何も変わってねえよ。つか時間かけたくねえんだよな。早くチビに不死の術をかけてさあ、色々したいし……やべえ、鼻血出る!」


想像だけでお腹いっぱいになっている色ぼけ魔王に呆れ返ったベルルは、かつて世界征服を企んで、共に針山の上の城で過ごしてきた日々に想いを馳せた。


…この人を癒せるのは自分しか居ない、と思っていたのに――


「コハク様…あたし、コハク様が欲しいな」


急にそうねだって、翼をはためかせながら小さい姿のまま耳元で囁くと、翼をつままれて舌を出して子供のように笑い、ベルルをどきっとさせる。


「やだね。最近チビが聡くてさあ、すーぐ膨れるし。や、それも可愛いんだけど!マジ可愛いんだけど!やきもちねー、いいもんだよな」


…本人もかなりのやきもち妬きなことに全く気付いておらず、むかっときたベルルは突然大きな姿になると路地裏にコハクを連れ込み、背伸びをして無理矢理キスをした。


――元々積極的な黒妖精とコハクが妖精の城で出会った時…ベルルは妖精の中でもかなり美人で、それでコハクの目に留まったのもあったが、


今はラス以上に興味を持たせる存在は居ないので、ひとまず…

“据え膳喰わぬは男の恥”がモットーな魔王は乱暴にベルルを壁に押し付け、期待に応えてやった。


「コハク様…っ」


「はい終了。あー、チビとチューしたいなー。おい、戻るぞ。小僧がちょっかい出してたらケルベロスの餌にしてやる」


まだ余韻の残る唇の感触にぽうっとなりながら小さい姿に戻り、コハクの服の中に潜り込んで居なくなったベルルと一緒に戻ると、

ラスは起きていたが…起き立てだったらしく、目を擦りながらまだベッドの中でごろごろしていた。


「あ、コー…おはよ」


「はいおはよ。こんなつまんねえ町早く出ようぜ」


いそいそとラスの隣に潜り込んで嫌がれるほど沢山、頬や耳や唇にキスをして、べたべたしまくった。
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