魔王と王女の物語
崩壊したホワイトストーン王国。


がれきの山の前に、降り立つ。


…あまりにも無残な光景だった。

死傷者は膨大な数で、突然街も城も爆発して、逃げられる者など誰も居なかった。


――乾いた風がラスの金の長い髪を揺らし、立ち尽くしている様子を馬車に寄りかかりながら見つめる。


…悪いことをしたとは思っていない。

あの時のホワイトストーン王国の王は、魔法使いを侮辱したのだ。


『魔法などもう必要ない!私たちには水晶があるのだから、魔法使いはもう用ずみだ』


許せなくて、針山の上の城から指先ひとつで力を放ち、水滴を落とすかのようにして、王国を壊した。


王も王妃もその子供たちも、全員死んだ。

そして立ち上がったのが…カイだ。

ラスの父であり、勇者の金髪の若い男。


「このがれきの下…まだ沢山人が眠ってるのかな…」


「さあな。チビ、先に言っておくけど、これは俺がやったんだ。…軽蔑するか?」


「ううん、お話はお父様から聞いたことがあるし…考え方が違ったんだよね。仕方ないよ」


振り返って笑いかけてくれたラスに、ほっとした。

そうしながらもほっとした自分を悟られたくなくて、ラスの背後に立ち、マントを広げて包み込むようにして抱きしめた。


「石を捜してどうするつもりなんだよ。そんなに俺をやっつけたいのか?」


「え!?私、そんなこと思ってないよ?リロイ…どういうこと?」


聖石の加護を求めてこれから他の王国も回ろうとしていることを知らなかったラスは、がれきの山の上を歩いて聖石を探し求めるリロイに非難を込めた声を上げて、焦らせた。


「ち、違うよ。聖石は陛下が預かって守っていくんだ。悪い人の手に渡ったら大変だから」


「悪い人?もしかして俺のことか?チビ…俺さあ、あいつにやっつけられちゃうかも」


悲しそうな表情を浮かべると、くるりと振り返って見上げてきたラスのグリーンの瞳は真剣に心配してくれていて、ぎゅっと抱き着いてきて魔王をコーフンさせる。


「駄目だよ、コーはずっと私の傍に居るんだから!リロイ、駄目だからね!」


「…ラス…」


やられてなるものか。

ラスと生きるために。
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