魔王と王女の物語
それからコハクは少し無口になり、

ティアラとリロイは結局事情を話してくれずに曖昧にしてしまって、

聖石が見つかれば、それはコハクへの脅威になるかもしれないということだけはわかっていて、

2人は真剣に石を捜していたが、ラスは“見つからなければいいのに”と思いながら荒廃した風景を眺めていた。

すぐ横には草原地帯が広がり、白い点が散らばっていて、よく目を凝らすと山羊の集団だった。

動物が大好きなラスは興奮してよろけながらがれきを駆け下りてコハクをハラハラさせると、手を引っ張って草原地帯に侵入した。


「おい、チビ?」


「山羊が居るの。あ、男の子が居るよ、すみませーん、山羊に触ってもいい?」


10歳程の男の子がごつごつした岩に腰かけていて頷いたので、早速山羊に近づいたが…逃げて行ってしまう。


「俺が捕まえてやろうか?」


「ううん、いいの。触れたくないんだよきっと」


しゅんとなっていると、そばかすだらけの男の子が口笛を吹くと2、3匹の山羊が駆け寄ってきて、ラスを見上げて目を輝かせた。


「ねえ、どこかのお姫様なの?すっごい可愛い!」


「可愛いだろ?可愛いのはわかってんだけどあんまじろじろ見んな!」


ずい、と前に出て立ち塞がるコハクの脇を潜り抜けて角を撫でてやっている男の子の隣に立つと、急にしゃがんで乳を搾り始めた。


「わ、美味しそう」


「絞ってみる?絞り立ては美味しいよ」


「いいの?ありがとう!コーも絞ってみる?」


「俺は山羊じゃないのを絞りたいなー」


「?何を絞るの?」


「さあな」


わいわいやっている間に石を必死に捜していたリロイとティアラも集まってきて、山羊のお腹の下の乳に指で触れて絞る態勢になっているラスを見守る。


「こう?」


「あっ、そんなに引っ張ると…」


「きゃっ」


勢いよく飛び出た乳がラスの顔や首、ドレスにかかり、驚いていると…


「やべえ!鼻血出る!!」


「か、影!変な想像をするな!」


魔王、しゃがんで悶えるの巻。


暗かった雰囲気はあっという間に吹っ飛んで、

ラスの顔は汚れたままだった。
< 150 / 392 >

この作品をシェア

pagetop