魔王と王女の物語
村の奥に進んで行くととてものどかな雰囲気に癒されたラスが新鮮な空気を吸い込んで空を見上げた時――


「あ、コー、すっごい綺麗な鳥さんが飛んでる!」


「お、ほんとだな。とっ捕まえて羽むしってドレスでも作ってやろうか?」


朱い鳥と碧い鳥がこちらに向かって飛んで来たので、ラスが手を振ると、それに応えるように頭上で旋回し始めた。


「つがいなのかなあ?素敵だね、神話に出て来る鳥さんたちだったらいいのに」


「チビは神話好きだもんな。よし、やっぱり捕まえてやろう」


腕まくりをして碧い鳥に向かって人差し指を向けた時――

危険な力を察知したのか、ものすごい速さで飛び去ってしまってラスががっかり肩を落とした。


「コーの馬鹿、逃げちゃった…」


「悪い悪い。チビ、あの家みたいだぜ」


コハクが顎で指したのは、屋根が赤く塗られたこじんまりとした家で、リロイとティアラが慎重に辺りを探っていた。


「どう?」


「中はよく見えなかったんだけど、女性のお年寄りが1人住んでるみたい」


「へえ、みんなおばあさんを怖がってるの?変なの」


ティアラとラスが顔を合わせて笑うと…ドアが開き、中からおばあさんが顔を出した。


「…なんだありゃ」


「うーん…魔物…?」


リロイとコハクが出てきた“おばあさん”の人相に首を傾げた。


おばあさんは…

足首まで隠れるふりふりのピンクのネグリジェに、顔半分が隠れる大きなマスク、

そして大きな眼鏡をかけて、頭にはネグリジェと同じ色の帽子を被っていた。


…明らかに怪しい。


「お腹がぱんぱんだね。太ってるようには見えないのに」


「お、チビ、いいとこに気が付いたな。あれは何かをたらふく食った腹だぜ。この村にそんなに食料は無さそうだけどな」


4人でひそひそと話していると、おばあさんが…喋った。


「おや、これは美味しそ………可愛らしいお嬢さんたちだね。どうだい、中へ入ってお茶でも飲まないかい?」


「いいの?ありがとうっ」


「駄目よ。近付いちゃ駄目」


わかっていないのはまたもやラス1人だけ。


あれは…


魔物だ。
< 154 / 392 >

この作品をシェア

pagetop