魔王と王女の物語
右の肩口にあてられた真っ黒な剣が、ぞり、と腕に食い込んできて、鮮血が噴出した。


「うぎゃぁあ!!」


「おー、イイ叫び声だねえ」


ヘンタイ魔王はわざとゆっくり剣を食い込ませながら長い間苦痛を与えて、逃げないように喉輪をして動けないようにした。


「まだ気絶しないのか?ケルベロス、いくぞー」


『はーい』


落ちた右腕を宙に放り投げると巨体のケルベロスがジャンプをしてキャッチすると華麗に着地して剛毛の生えた右腕をばりばりと平らげる。


『まずっ』


「次は左腕だぞ」


「や、やめてくれ、やめ…、うぎゃぁあっ!!」


今度は左腕にゆっくり刃が食い込んできてまた狼が絶叫し、ティアラが両耳を塞ぎながら顔を背ける。


「影、やりすぎだぞ!」


「ああ?こいつチビを食ったんだぞ?何がやりすぎなんだよ、これから両脚に…」


――その時、狼の身体から力が抜けた。


もうちょっと遊びたかったのに勝手に気絶されて、ケルベロスの巨体に狼を乗せて家の前まで移動させると、狼を仰向けにベッドに放り投げた。


「ベルル、血止め」


「妖精使いも激しすぎですよ」


まだ出血している両腕に銀色の羽の鱗粉を振りかけると、徐々に血が止まってくる。


「コハク様、お腹の中に入る気ですか?」


「当たり前じゃん、チビが居るんだし。助けてさあ、誉められてさあ、すっげえご褒美貰うんだ。やべ、超楽しみ!」


先程まで見せていた凶悪な笑みは綺麗に消えて、無邪気にピンク色の妄想を開始した色ぼけ魔王の表情にベルルだけでなく、ティアラとリロイもため息をついた。


「まだ…生きているわよね?」


「不吉なこと言うなよな。あー俺も早くチビの腹を膨らませ…」


「影、早く行け!」


怒られて肩を竦めると、チャックに手をかけてゆっくりと下ろす。

中は…臓器はなく、真っ黒だった。

どこか違う次元に繋がっているらしく、軽い調子で腹の中に脚を入れた。


「じゃ、行ってきまーす」


「必ずラスを連れて帰って来いよ!」


「俺に命令すんな。お前後でとっちめるからな」


あくまで明るい魔王。
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