魔王と王女の物語
…急に明るくなって、眩しくて瞳を細めながら開けると…


火球を手にしたコハクが唯一触れることのできる足場にその業火を落とした。


「チビ、捕まってろよ」


きゅっとコハクの首に腕を回してしがみつくと…


『ぎゃああ、熱い!熱い!!!』


まさに七転八倒。

狼の腹の中で火をつけたせいで目が覚めた狼が、急いでチャックを下ろしてコハクたちを外へと投げ出した。


「あっぶねえなあ!チビが怪我したらどうするんだよ!」


「ラス!大丈夫!?」


コハクのマントで身体を包まれたラスに駆け寄ったティアラが目尻に涙を浮かべながら抱き着いた。


「ごめんねティアラ、心配させちゃった?…いたっ」


「どこ痛めた?見せてみろ」


まだ床をのたうち回っている狼に目もくれず、魔王はラスに歩み寄ると、右肩が少し爛れているのを見て…一気に怒髪天に来た。


「お前、やっぱ全殺し。小僧、ここからチビを連れ出せ」


ここは大人しく言うことを聞いて、まだ豪雨が降り注ぐ中森の木の下に移動すると…


「ぎゃぁあぁー!!!」


狼の絶叫が迸り、窓が真っ赤に染まった。


『魔王様、イッキイキしてるー』


一緒について来ていたケルベロスが羨ましそうに言いつつ、何が起きているのか理解できていないラスがきょとんとしていると…


「ケルベロス、後はどうにでもしていいぞ。チビ、俺が抱っこしてやるから来い」


「うん」


――ラスの右肩の爛れは消化されようとしていた証で、間一髪で助けることができてほっとしつつも、傷跡を舐めて手を翳す。


「真っ白い肌に傷でも残ったらどうすんだよ。マジでキレそうだった。ヤバかったー」


切れ長の赤い瞳には未だに怒りの色が浮かんでいて、魔王の治療でもう肩が痛まなくなったラスは狼屋敷を指さした。


「狼さんどうなったの?」


「きついお仕置きしたから今頃きっと何も言えなくなってるぜ」


――つまりそれは死を意味していたのだが、ものぐさ王女はそれ以上の追及をせずに笑いかけた。


「コー、助けてくれてありがとう」


「当たり前だろ、気にすんな」


魔王、ご褒美選びに夢中。
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