魔王と王女の物語
夕方になってもコハクが戻って来ない。

監視したがりのくせに時々こうして居なくなることがあり、リロイが公園のベンチにラスを座らせて片膝をついて手を握った。


「大丈夫だよ、影が戻って来ない時なんてあった?」


「ううん、ないけど…コーって時々私を放ってどこかに行っちゃうの。もしかして…女の人のところ…」


「ラス、余計なことは考えずに身体を休めて。その…はじめてのことだし、身体がつらいでしょ?」


心細さについリロイの首に抱き着くと、そのままベンチに腰かけてしっかりと抱きしめてくれた。


「今は影の代わりでもいいよ。影の真似をしてあげようか?“チビ、抱っこさせろ”!」


「ふふふっ、今のすっごく似てた!ありがとうリロイ。ちょっと落ち着いたかも」


ラスとリロイ、そしてラスとコハクにはそれぞれの絆がある。


ラスを大切にするという点では魔王とは意見が一致していて、ぽんぽんと背中を叩いてやると隣にラスが座り、にこにこと見上げてきた。


ついつられてにこにこしていると…


「ラス、ホットチョコレートを買ってきたわ」


「わ、ありがとう!ティアラ、半分こしよ」


きゃっきゃと騒ぐ2人をリロイが微笑みながら見守る。


純白のマントに白銀の鎧、そして勇者の証である金色の髪を持つリロイは注目されていて、村娘たちから熱い視線を注がれていた。


意外とそういう視線に慣れているリロイは、遠くからぷらぷらとこちらに向かって近付いて来る魔王を発見して腰を上げた。


「ラス、影が帰って来たよ」


「ほんとだ!コー、お帰りなさいっ」


細いがしっかりしている腕にぶら下がるとすぐに抱き上げてくれて、なんとなく埃っぽいコハクの髪についた粉のようなものを払ってやった。


「コー、どこに行ってたの?」


「秘密ー。部屋に戻ったら教えてやるよ」


「じゃあすぐ戻ろ。あのね、ホットチョコが美味しかったの」


離れている間の出来事を口下手ながら必死にコハクに話して、ホットチョコと聞いてコハクがラスの唇をぺろっと舐めた。


「ん、甘い。チビのチョコレートがけとか美味いだろうなあ。…超やべえ!」


また妄想でコーフン。
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