魔王と王女の物語
珍しくラスが率先して宿屋に戻ると、コハクの腕を引っ張りながら部屋へと連れ込んだ。


「コー、早く教えて?どこで何してたの?」


「まあ待ちなさい」


ドアにもたれかかって腕を組みながらもったいぶるコハクに抱き着くと見上げながら身体を揺さぶると…


「仕方ねえなあ、じゃあそこ座れよ」


「うんっ」


ベッドに座らせてコハクがひざまずくと、握り拳を作ってラスの目の前に持って行った。


「?コー?」


「これ、なーんだ?」


ゆっくりと手が開く。


それを見た時、ラスの瞳が限界まで大きく見開かれた。


「コー…これ…ガーネットの…リング?」


「そ。ちょっと暇つぶしに堀りに行ったら偶然でっかい石を見つけてさ、さっきまで職人に磨かせてたんだ」


プラチナのリングの土台に大きなガーネットの石が嵌まっていて、コハクの瞳の色と見比べると本当に同じ色をしていて、ラスの頬が緩んだ。


「綺麗…」


「やるよ。ほら、薬指出せって」


「薬指?他の指じゃ駄目なの?」


「駄目なの。ほーらぴったり!ふふふふ、実は俺の分もあったりしてー」


また手品のように握り拳の中から少し大きめのリングが現れて、ラスがそれをさっと奪うとコハクの左腕を取った。


「じゃあ私が嵌めてあげる」


「嵌める?!ふふふふ」


――ラスから左手の薬指にリングを嵌めてもらい、お揃いを身に着けた2人はリングに見入った。


「コーとお揃いだね、嬉しいっ」


「薬指に嵌める意味、知ってるか?」


「ううん、知らない」


細い薬指を引き寄せてリングにキスをしながら上目遣いでラスを熱い視線で見つめた。


「意味は、“結婚してください”。これでチビと俺は将来結婚する約束を…」


「!こ、コー、私まだそんな…好きとかもわかんないのにっ」


手を離さないコハクから遠ざかろうとするが許してくれず、逆に引き寄せられて腕に抱かれてしまった。


「チビは俺のものになるんだ。絶対そうなる。それ外したら絶交だからな」


「え…っ、う、うん、わかった」


甘い口づけを交わして、魔王、絶好調。
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