魔王と王女の物語
最後に降りてきたリロイはすっきりとした表情をしていて、ラスが隣の椅子を叩いて催促してきた。


「おはようラス。影が僕を睨んでるからそこに座るのはやめておくよ」


ティアラの隣に座ると、親しげに肩の上に手を置いてラスを少しやきもきさせた。


「おはようございます。よく眠れましたか?」


「はい。その…昨晩はごめんなさい」


「いえ、僕の方こそ」


――昨晩マーガレットの花畑へ行っている間にリロイとティアラの仲に進展があったようで、2人が仲睦まじげにしている姿に少しだけ胸がちくりと傷んだ。


「そこの小僧はボインの“勇者様”だし、俺はチビの“勇者様”だもんな」


「僕は誰の勇者でもない。ゴールドストーン王国に仕える白騎士団の騎士だ」


コハクの顔を見もせずにコーヒーを飲み、ティアラがぽうっとした表情で隣のリロイを見つめて、


ラスが手を伸ばすとテーブルの上のリロイの手に手を重ねた。


「…なに?どうしたの?」


「一生私の国に居てくれるんだよね?ずっとだよね?」


「さあ…それはラス次第じゃないかな。そこの影とずっと一緒に居たいのなら、僕は…国を出て行くよ」


「え…」


…初耳だ。


コハクともリロイともずっと一緒に居れるものと思っていたので、リロイが国を出ていくという想像を、ラスは全くしていなかった。


「へえ、出てくのか。いいんじゃね?チビ、選択する余地もねえだろ。お前は俺のものだからな」


左手の薬指に嵌っているリングに触れながらコハクが色気むんむんで迫ったが、ラスは半ば放心状態でリロイを見つめていた。


「どうして?どうして出て行くの?」


「影が嫌いだから」


端的に告げて手早く食事を終えると、さっさと立ち上がって宿屋の裏手にある馬屋を笑顔で指した。


「じゃあ僕先に準備してるから。ラスはゆっくりしてていいよ」


「私も行きます」


ティアラが慌てて後を追って行き、またその肩にリロイの大きな手が乗ったのを見て、ラスはコハクの袖を引っ張った。


「コー…」


「俺もだーいっきらいだっつーの」


ラスに迷いを作り出すリロイに対して殺意を覚えた。
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