魔王と王女の物語
「どうしてコーとリロイは仲良くできないの?」


相変わらずリロイの話ばかりするラスいらいらしながら窓に寄りかかった。


「知らね。それよかあいつの心配されるとすげえ腹が立つ」


今度はコハクがへそを曲げそうになって口を噤む。


…ただ同じ質問をティアラにできないのは、リロイとティアラの仲の良さを見せつけられてしまいそうだから。


それだけはどうしてもいやで、御者台の窓から見える馬上のリロイとグラースの背中を盗み見した。


いっそのことのこと本当に闇に葬り去ってやろうか――


悪だくみをしている時の魔王の顔は最高に嬉しそうで、そして凶悪で…ティアラは身震いをしたが、ラスはそれに気づかず、背中を見つめ続ける。


「小僧が…俺の天使ちゃんの気を引こうなんざ100年早いんだよ」


「魔王…リロイを傷つけるのはやめて。私が全力で止めるわよ」


「へえ、お前が?今試してやろうか?」


背を向けているままのラスに向かってカーテンを引くような仕草を見せると暗闇になって、驚いて固まっていると…


魔王の赤い瞳が輝いているのが見えたと思ったら、息ができなくなるほどきつく抱きしめられた。


「や、やめて…!」


「止めてみろよ」


魔王の顔を間近で見てしまったティアラは…魔に魅入られて、わなわなと震える唇に乱暴に唇が重なってきて、暴力的なキスに身体が大きく揺れた。


「小僧にやるのは惜しいぜ。いいか、お前の処女は俺が貰ってやるからな、大切に取っとけよ」


「この…悪魔…っ!」


「俺はそんな生半可な存在じゃねえぞ」


――そしてまたカーテンを開けるような仕草を取ると、ラスが目の前で首を傾けていた。


「ティアラ、ぼーっとしてたけど大丈夫?」


「え…!?だ、大丈夫よ…。なんでもないわ」


何度も手の甲で唇を拭い、コハクは何食わぬ顔でラスの隣に戻ると腰を抱き寄せて頬をぺろぺろと舐めた。


「コー、くすぐったいからやめて」


「だって美味そうなんだもん。あー、早くシたいなー」


「だからするってなにを?」


「意味はいつか教えてやるって」


くつくつ笑った。
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