魔王と王女の物語
…やはりラスには完全な“魔王耐性”があるようだ。


どんなに色気むんむんで魔王が迫ってもラスはきょとんとしていて、むしろ“暑いからべたべたしないで”と魔王を押しやることさえある。


そんなラスにも色ぼけ魔王は萌えるらしく、そういう時は余計に激しくラスをべたべたと触っていた。


「あれ?馬が止まったよ。コー、妖精の森に着いたの?」


「そうみたいだな。ま、1回降りっか」


3人が馬車から降りると、先に辺りを見回っていたリロイとグラースがやや緊張した表情をしていて、剣の柄に手を添えていた。


「え…魔物が居るの…?」


「いや、違う。影、早く入り口を教えろ。何か様子が変だ」


「ふざけんなよ俺に命令していいのはチビだけだぞ」


「コー、早く妖精の森の入り口教えて」


「…わぁったよ。ちょっとどいてろ」


――妖精の森は、魔力のある者にしか見えない。


…が、リロイが気にしている通り、入り口のある森は明らかに様子がおかしい。


「…ん?入り口開いてんじゃん。チビ、こっち来い」


「うん。コー、ここが入り口?大きな木だね、ここを潜れば妖精のお城に行けるの?」


「そうなんだけどさー、なんかもう人間がたくさん居るくさいんだけど」


「え?」


すると…コハクの懐にずっと忍んでいたベルルが悲鳴を上げた。


「ベルル、どうした」


「お城が…お城が襲われてます!」


リロイとグラースが視線を交わし合い、コハクたちよりも先に大きな大木の幹を潜ってみると…きな臭い匂いが鼻をついて、そして熱風が髪をなぶった。


「これは…“妖精狩り”だな…」


「コハク様、助けて下さい!私を助けてくれたときみたいに…お願いします!」


「コー…“妖精狩り”って…なに?」


熱風で目も開けられないラスのためにマントを脱いで頭に被せて、水の入った皮袋を取り出し、栓を開けるとウンディーネを召喚した。


「度々悪いな。この火、どうにかできるか?」


『この位わけないわ。任せておいて』


世にも恐ろしき“妖精狩り”。


ラスには教えたくなかったが、人の凶悪さを、コハクが語った。
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