魔王と王女の物語
リロイとグラースは見るからに強そうで、しかもリロイが腰に下げている剣は…


魔王を倒した英雄譚…サーガが描かれている絵で見たことのある剣だ。


サーガを知らない人間は居らず、しかも鎧にはゴールドストーン王国の紋章が刻まれているため、男たちはそれを見て戦意を喪失して女王を捕えるのを止めたのだが…


待ち構えていたのは真っ黒な男と、その腕に抱かれている金の髪の美少女と、そして炎の虫かごだった。


「これで全員だな?」


「そ、そうだ。城にはまだ入ってねえ」


「とりあえず妖精を解放しろ。チビ、これでいいんだろ?」


「うんっ。コー、ありがとう!」


唇すれすれのところにちゅっとキスをされて有頂天になった魔王はうきうきしながら炎の虫かごを素通りして閉ざされた扉の前に立った。


「グラース、女王に会いに行くぞー」


「ああ。ティアラとリロイは…」


「私は妖精の治療をします。中へはあなたたちだけで」


またティアラも美少女のため、捕えられた盗賊たちは炎の虫かごの中から下品な笑い声を飛ばしていて、


内容はわからないながらもラスが悲しそうな顔をしたので、片腕でラスを抱っこしたままもう片方の手で自身の唇の横でチャックを閉じるような仕草をすると、


男たちが急に何も言わなくなって、慌てまくった顔を互いに見合わせながらパニックになっていた。


「今のも魔法?」


「まあな。チビ、どこも火傷してないな?痛い所は?」


「ないよ、ありがとう。コー」


首に腕を回して抱き着いてきたラスににやにやしっぱなしの魔王は、横を歩くグラースが失笑しているのを見て笑いを引っ込めた。


「おい、今からお前の呪いを解いてやろうっていうのにその冷たい瞳はなんだ」


「お前は裏表が激しすぎる。多少は優しい面もあるようだが」


飴と鞭を器用に使い分けるグラース。

それに対してコハクは草が絡み付いたようなレリーフが刻まれている白い扉に手をあてると肩を竦めた。


「チビは俺の大切な花嫁だからな、そりゃ大切にするに決まってるだろ」


「コー、や、やめてよ花嫁なんて…」


照れるラスを抱っこしたまま、女王に呼びかけた。
< 199 / 392 >

この作品をシェア

pagetop