魔王と王女の物語
2階の一番奥には一際豪奢で重厚な白い扉があり、何の警戒心も抱かず扉を押してみると鍵がかかってなかったので、そのまま中へと入った。


「わあ…綺麗…」


その部屋は色とりどりの花で満ち溢れ、そして1番奥には、円状の花々に取り囲まれた1人の妖精が居た。


…プラチナ色の髪と瞳…きつく吊った瞳はまっすぐにラスを捉えていて、尖った耳は妖精らしく、

ただ…敵意に満ち溢れていた。


「お前が私の森を焼いたのね」


「え?ちが…」


「まさか女だとは思わなかったわ。それに…お前は美しいわね。私は美しい女の人間は大嫌いなのよ」


すう、と伸ばした人差し指。


何が何だかわからないというような表情でぽかんと見返しているラスに向かって、銀色の光が放たれた。


それはまっすぐにラスの心臓を打ち抜き、最初は驚いて自身の胸を見下ろしていたラスが…


ラスの表情が…


みるみる無くなっていった。


「私がその呪いを解かない限りもう一生笑うことはできないわ。私の森を侵したんだもの、当然の報いよ」


「…私…どうしちゃったの…?」


――自身の声に抑揚がなく、それにも驚いたが、これは…グラースと同じ現象だと気付いて、目の前でくすくす笑っているのが女王であることにようやく気付き、


そしていつも傍に居るはずの者の名を叫んだ。


…叫んだつもりだった。


「コー…、コー…」


「…チビ…お前…呪いが…?」


ラスの声を決して聞き逃さないコハクが息を切らしながら部屋に駆け込んできて、全くの無表情のラスの肩を揺らし、眉を潜めた。


「チビ…」


「あら…コハク?久しぶりね、会いたかったわよ」


ねっとりと絡み付くような視線と声に振り向くと、女王は花に囲まれた玉座から立ち上がり、悪びれもなくぴくりとも動かないラスと、みるみる殺意を膨らませる魔王を見て、笑った。


「あなたの連れだったの?しかも女なんて…」


「チビに何をした?こいつの可愛い声と表情を奪いやがって…許さねえぞ」


「お察しの通り呪いをかけたのよ。解くことももちろんできるけれど…ただでは解かないわよ」


女王お得意の交換条件。
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