魔王と王女の物語
「その子とどういう関係?まずはそこから聞かせてもらうわ」


女王の高圧的な態度はいつものことで、笑えなくなったラスが今どんな気持ちでいるかもその表情から読み取ることができず、

コハクは歯ぎしりをしながらラスを抱き上げて何度も頬にキスをした。


「チビ、大丈夫だからな、俺が絶対呪いを解いてやっから」


「コー…女王様にひどいことしないで」


――この期に及んで自分より他人のことを案じるラスの優しさが胸に染み入ってきて、

指を鳴らすと一瞬で花のブランコが現れて、それにラスを乗せると揺らしてやりながら女王の問いに答えた。


「こいつは俺の女だ。城に戻ったら花嫁にする。答えたぞ。早く呪いを解け」


「いやよ。森が再生するまでどの位年月がかかると思っているの?それに花嫁なんて…あなたは一生独身で居るのよ。そして時々私を抱きに来て」


「いやだっつーの。早くチビを…」


ラスとの約束を破ってでも呪いを解こうとした魔王が一歩進み出た時、扉が開いてグラースが剣を構えながら中に入って来た。


女王はグラースを見て思い出したように声をかけた。


「お前は私の森に迷い込み、城まで入り込んできた人間だわ」


「…元々はこいつの呪いを解きにやって来たんだ。ほら、早く両方の呪いを解けよ。でないとひどいことするぞ」


高圧的な態度はお互い様だったが、とにかく森を焼かれて憤慨している女王はコハクが花嫁を連れて来たこと自体にもかなり腹を立てていて、


無表情でブランコを漕いでいるラスと、剣を構えながら近付いて来るグラース2人を交互に指した。


「じゃあこうしましょうよ。どちらかの呪いを解いてあげるわ。その後もう1人をどうするかは私の気分次第よ」


「はあ?マジふざけんなよ、そんなのチビに決まって…」


「コー、私はいいの。先にグラースの呪いを解いてあげて」


「…チビ」


「グラースは笑うときっととっても綺麗だから、笑ってる顔を見たいの。コー、お願い」


――みるみる愛しさが溢れてきて、コハクの赤い瞳は誰の目から見ても潤んでいて、またぎゅっとラスを抱きしめた。


「…わかった。ちょっとだけ待ってろ」


笑顔は戻らない。
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