魔王と王女の物語
途中大雨に降られて予定が狂い、一行は少し道を逸れてドリスという小さな街を訪れた。

その頃には雨は止んでいたのだが陽はどっぷりと暮れていて、街の外で馬車を消すとラスの手を引いて街へと入り、

やはり各々が目立つ容姿をしているので、特にリロイとコハクは若い女たちから好奇の目で見られていた。


中には積極的にアピールしてくる女も居て、コハクのいかにも性格の悪そうな流し目と笑みにうっとりとなっている。


「…コー…」


「ん?どうした?」


「みんなコーを見てる。どうして?」


「それはさあ…」


ラスを抱っこすると周囲から歓声が沸き、いつものように頬をぺろぺろと舐めると耳元で囁いた。


「俺が悪い男だから気になるんだ。女ってそういうもんだぜ」


「みんなコーを見てる。…やだな…」


…きゅんきゅんっ!!!


――その辺の女には眼中の無い魔王は可愛いお尻を撫でまくりながら、うきうきしていた。


「チビ、風呂入りたいだろ?入るよな?」


「うん。コーも一緒に入る?」


「もっちろん!悪戯もしていいか?」


調子に乗り出した魔王に蹴りでも入れようとリロイが憤然と歩み寄ろうとした時、


「きゃっ!」


曲がり角から突然女が飛び出してぶつかってきて倒れ込み、リロイが慌てて抱き起した。


…驚くほど粗末な服を着て、髪はぼさぼさ。


「だ、大丈夫です。っ…」


「足首を捻ったんですね?僕が家までお送りいたします」


騎士然としたリロイにぽうっとなった女の傍らには紙袋が転がり、食材が散乱していた。

それを見たラスが悲しそうな顔をするとコハクが何かを唱えて指を鳴らすとふわふわと食材が浮き、破れた紙袋が元に戻り、女の口がぽかんと開いた。


「コー、送ってあげようよ。ねえ、名前はなんて言うの?」


「私は…レイラです。ご迷惑をおかけして、すみません」


コハクが首を傾けてレイラの顔を覗き込んでにやっと笑った。


「へえ、美人じゃん。ちょっとよく顔見せろよ」


「え…、私は美人なんかじゃ…」


魔王の悪い癖が再発し、ラスは魔王が離れていかないようにマントをきゅっと握った。
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