魔王と王女の物語
レイラが案内した家はそれなりに大きく、ただ何故こんなにみすぼらしい格好をしているのかがラスには理解できなくて、

リロイがレイラを抱っこしたままドアを叩くと、中から怒鳴り声が聴こえた。


「遅いじゃないか!どこで道草食って……ま、まあ!あ、あなた方は?」


「通りすがりの者なのですが、申し訳ありません…出会いがしらにぶつかってしまってお嬢さんの脚をくじかせてしまったんです」


「まあ大変!早く中に入りなさい!あなた方もどうぞ中へ」


――身なりが良く、リロイの鎧の紋章を見たレイラの継母の頭の中では瞬時に計算が働き、

しかも真っ黒な男と金髪の男はずば抜けて容姿が良く、奥からは娘2人が黄色い声を上げていた。


「お義母さん…ごめんなさい」


「全くぐずな子だね!早く掃除に戻りな!」


「あーなんか腹減ったなー。チビも腹減ったろ?」


突然コハクが声を上げてラスの頬を指でくすぐるとラスが頷いて、娘2人が母親に輝いた瞳で懇願した。


「あの男性たちはきっとお金持ちよ。それにかっこいいし…お母さん、今日はここに泊めてあげて!」


「ふん、お前たちなんざ誰が相手にするかよ」


ぼそ、とコハクが呟き、通された広間でレイラを下ろすとコハクが汚れた長い金の前髪をかき上げた。


「ふうん、やっぱり美人だな。どうしてお前だけ扱いが悪いんだ?継母なのか?」


「…はい。仕方ないんです、私はのろまだから…」


「へえ。なあ、風呂に入って来いよ。俺が入れてやるし」


「え…」


――コハクがレイラをべたべたと触りまくり、ラスの胸はきゅうきゅうと痛くなって、ティアラの腕にしがみ付くと俯いてその光景を見ないようにしていた。


「ラス…」


「ティアラ…ご飯は外で食べよ?駄目?」


「いえ、いいわよ。私とラスは外で食べて来るわ。あなたはいちゃついてれば?」


「僕も行くよ。影、お前だけここに残ってればいい」


「じゃあ私も行く」


皆に冷たくされて魔王は肩を竦めたが、ラスがこうなることもわかりきっての魔王の作戦。


べたべた甘やかすだけではない。


自分の価値をも知らしめて、ラスを虜にする。
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