魔王と王女の物語
コハクは多くを語らず、ただ浴室の前に立ち続けた。

ラスはそんなコハクの隣にぴったりとくっついて、色々聴きたいのに聞けずに唇を噛み締めて、

いつもなら“どうした?”と聞いてくれるコハクは、やはり何も言ってはこない。


「…コーはレイラさんが気になるの?」


「ん?気になるっつーか、せっかく綺麗な女なんだから着飾った方がいいじゃん」


「ふうん…。どうせ私は綺麗じゃないもん」


「はあ?お前はさあ」


言いかけた時寄りかかっていたドアで身体を押されて上体を起こすと、その隙間からコハクが白いドレスを押し込んだ。


「これ着てみろ。髪は俺がやってやる」


「え…こんな高そうなドレス、無理です!」


拒絶し続けるレイラに、ラスはこの状況を早く終わらせようと思って明るい声で話しかけた。


「いいから着てみて?絶対綺麗だと思うから!」


「あ、あの…ありがとうございます…」


ぱたんとドアが閉まってそれから数分間、コハクと会話を交わすこともなく待っていると、レイラが出て来た。


…さっきまでは薄汚れていてどんな表情かもわからなかったが、


金の艶やかな長い髪に真っ青なブルーの瞳…

背も高く、コハクの隣に立つと恋人同士のようで、

可愛くて綺麗なものが大好きなラスは本気で感動して興奮してレイラに抱き着いた。


「綺麗!ねえコー、早く髪をやってあげて!早く!」


「はいはい、全く俺の天使ちゃんは我が儘だなあ」


リロイやグラースたちが継母や姉たちの気を引いているうちにみすぼらしいレイラの屋根裏部屋に移動した。

ぱちんと指を鳴らすと一瞬で濡れた髪が渇いて、頭の上で結い上げられると綺麗なうなじが露わになった。


「これもチビのだけどいいよな?」


「うん、なんでも使って!」


ピンクの大きな花のコサージュを髪に差したレイラは…とてつもなく綺麗で、最高に興奮したラスは先ほどまでのもやもやが吹っ飛び、今度はコハクに抱き着いた。


「うはっ!チビ、胸がっ!!」


「すっごく綺麗!」


「後は馬車と従者か。ふふふ、楽しくなってきたな」


「うん!」


面白いことになってきた。
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