魔王と王女の物語
レイラはコハクの恐るべき二面性に驚嘆していた。


自分と話している時はどうでも良さそうな口調で。

ラスと話している時は声色が限りなく優しくなり、一目で性格が悪いと知れる種類の美貌が緩み、優しく縁取られる。


――そのギャップにレイラは少しずつ泥沼に足を取られて沈んでゆくような感覚を感じていた。


「私もパーティー行きたいな。でも招待状持ってないし…」


「紋章付きマント着てる小僧が居るじゃん。ボインも居るし、チビは第一本当のお姫様だし?世界一の美姫なんだぜ、俺がエスコートしてやるよ」


「うんっ。私お風呂入って来るね」


「待て待て!俺も一緒入るから!服脱がすのも俺だから!」


必死の声掛けも虚しく明日のパーティーのことで頭がいっぱいになったラスが勝手に階下へ降りて行き、コハクがため息をついているとレイラはきゅっと拳を握った。


「コハクさんは…ラスさん一筋なんですね」


「あ?ああ。チビが俺の下でどんな鳴き声上げるのかなーと思うともうたまんね。…なんだ?物欲しそうな顔してんな」


――こんなに綺麗な男を見たことがなかった。

あの騎士のような金髪の男も優しそうで綺麗だったが…この男の美貌は、壮絶さをも伴っている。


「お前は明日のパーティーで王子のハートを射止めてみせろよ。んで継母や意地悪な姉ちゃんたちを見返してやれ。面白そうだからその手助けをしてやる」


「もし射止めたら…私に何かご褒美をくれますか…?」


一瞬コハクの眉が上がったが、またにたりと意地悪げな笑みを浮かべ、レイラの腰を強く抱いて引き寄せると唇と唇が触れ合いそうな距離で囁いた。


「いいぜ、忘れられないような甘美な夢を見せてやる」


赤い瞳が蠱惑的に光り、魔に魅入られたレイラは腰が砕けてその場に座り込んだ。


「そのドレス隠しとけよ。今日中までに王子のハートを射止めなかったらそれまで。再び灰かぶりのレイラに戻るからな」


「はい…私…頑張ります」


この男に抱かれたい。触られたい。


…どうしてラスはあんなにべたべた触られたり笑いかけられたりしても平気な顔をしているのだろう?


――それはラスが魔王耐性を持っていたからだった。
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