魔王と王女の物語
ラスはドレッサーの前でコハクに白粉を塗ってもらっているレイラを鏡越しに見ていた。


「チビー、お前はここに居なくてもいいんだぞ」


「やだ。コーと一緒に居るもん」


「俺手が離せねえから相手できないぞ?」


「いいもん。とにかく一緒に居たいの。…駄目?」


……ずっきゅん!


嬉しさで全身血が駆け巡り、少し手を止めるとベッドサイドに腰かけていたラスの耳にちゅっとキスをした。


「食いたくなるからそれ以上はやめとけよ」


「“勇者様”になったコーを私が食べたい位だもん。…ほんとにカッコいいよ、コー」


――さっきから嬉しいことを連発して言ってくれるラスを触りまくりたかったがレイラの完成も間近だったので、

唇を噛み締めているレイラの顎を取って上向かせると、紅を人差し指で掬って綺麗な形の唇をなぞった。


「ん…」


「変な声出すな。チビがやきもち妬くだろうが」


「や、妬かないもん!コーの馬鹿!」


“コーの馬鹿”と言われる度にきゅんとして、超S体質の魔王はラスの前では時々超M体質になってしまい、ぞくぞくと身体を震わせた。


「よし、完成。鏡見てみろよ」


「え…これ…私…!?」


――緩くウェーブをつけた金色の髪と、真っ青な瞳が際立つように少し厚く塗られた白粉と赤い唇――


大きな胸とくびれた腰をガン見しているラスが気になって目を遣ると、両手で自分の胸を包み込んで揉んでいた。


「私ももう少し胸が大きくなったらいいのに…」


「チビ、やめろ!俺が揉んでやっから!なに、すぐでかくなるぜ。毎日さあ、俺がさあ」


「コー、ネズミさんをどうするの?痛いことはしないであげてね」


ラスの関心はすぐにネズミの方に移り、がっくりときた魔王は左手薬指を取ってキスをすると、うっとりとする笑みを浮かべた。


「こいつらが馬車を引くんだ。ちなみに馬車はかぼちゃ。いかしてるだろ?」


「かぼちゃの馬車なの!?うわあ、乗りたい!コー、早く早くっ」


――天真爛漫な王女。

誰の言うことも聞くことのないコハクが言いなりになり、傅く王女。


…王子を射止めれば、気を引くことができる…
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