魔王と王女の物語
裸足のラスを抱き上げて、コハクがレイラの横を素通りしてゆく。


「頑張れよ」


「…」


すれ違いざまレイラの耳元でそう声をかけて散らばっていた皆と合流し、長い階段を下りた。

皆で帰るかと思いきやコハクは馬車に乗らず、大地に手を翳して、例の真っ黒な天馬を呼び出した。


「わ、乗せてくれるの!?」


「ああ、これでひとっ飛びだ。じゃ、俺たちは先に戻ってるからな」


3人が唖然としていると、ラスを前に乗せてひらりと騎乗して腰を抱くと手綱を取り、腹を蹴った。


『魔王様、これが魔王様の女?』


「これとか言うな。次これ呼ばわりしたらお前の翼をむしってやるからな」


『へえ、本気なんだ?お嬢さんどうも、魔王様の乗り物です。落ちないように気を付けて下さいね』


「はいっ。お馬さん、よろしくね!」


鬣にちゅっとキスをすると嬉しそうに鼻を鳴らして嘶くと空を蹴って走り出し、あっという間にレイラの住む屋敷に着くと庭に下りて首に抱き着いた。


「ありがとう、また今度乗せてね」


『魔王様の居ない所でならいいよ』


「このエロ馬が…もう2度と呼んでやんね」


大地に浮かんだ魔法陣の中に天馬が消えていき、

疲れの出たラスが小さな息をつくとコハクが抱き上げて勝手に魔法で鍵を開けて中へ入ると泊まっている部屋に移動し、浴室の蛇口を捻るとラスをベッドに座らせた。


「疲れたか?湯が溜まったら声かけてやっから少し寝てろよ」


「うん…。コーも一緒寝よ?」


「独りじゃ寝れねえか?ったくいちいちチビは可愛いなあ」


背中から抱きしめて寝転がり、指を絡めて何度も折り曲げたりしているうちにラスの耳が赤くなってきて、にやっと笑った魔王はぺろんと耳を舐めた。


「ひゃんっ」


「やべ、燃えてきた!落ち着け俺!チビ、手ぇ離せって。離れないと俺何するか…」


「駄目っ。私を置いてどっかに行くつもりなんでしょ?コーは私の傍に居ないと駄目っ」


ころんと寝返りを打って胸の中に転がり込んできたラスを抱きしめているうちに…


「コー、なんかあたってる」


「おっと、落ち着け俺!」


またしても。
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