魔王と王女の物語
レイラが恥ずかしがりながらも、身体にかけていただけの服を床に落とした。


…ラスに比べれば随分と悩ましい身体つきで、いつもなら問答無用で頂いているところだったのだが…


ラスに愛の告白をして以来、コハクはさらにラスにのめり込んでいた。


ベッドを軋ませるとレイラが期待に満ちた瞳で見上げてきて、コハクはがりがりと髪をかき上げながら身体を起こした。


「コハクさん…?」


「…チビんとこ戻る。成功したようなもんとはいっても実際はしてねえしな」


――全くもって損な選択だ。

そうは思ったが、今はラスの隣で悶々としつつも一緒に寝ている方が楽しいし嬉しい。


「私…王子とは結婚できません。だって…あなたじゃないもの…」


性格が恐ろしく曲がった魔王はその言葉にまたぴんときた。

レイラの額に手を翳すと、月明かりを背に蠱惑的な微笑を浮かべ、レイラに、呪いをかけた。


「俺がいいのか?」


「私はあなたに一目お会いした時から魅入られてしまったんです」


サファイアのような美しい色の瞳がキラキラと光り、

それでもエメラルドのようなラスの瞳の方が好きで、


コハクはレイラの耳元に顔を寄せて行って、こそりと囁いた。


「お前に呪いをかけてやる。俺から一生逃れられない呪いだ。どうだ、嫌か?それとも受けるか?」


「かけて下さい、あなたから呪いをかけられるなら本望です」


……チビから言われたいなー!


――脳内はそんな不謹慎なことを思いつつも、自分に夢中になっているレイラの瞳を閉じさせると、そのままベッドに身体を沈めさせた。


「明日、王子がお前を捜しに街へやって来る。王子が現れたら逃げずに持って来る靴を履け。そして王子の顔をしっかりと見ろ。わかったか?」


「はい…」


「よし。じゃあもう寝ろ」


レイラは魔法をかけられて眠りにつく。

コハクはラスの部屋に戻ってベッドに潜り込んで金の髪を払い、首筋にキスをすると、目を擦りながらラスが抱き着いてきた。


「どこに行ってたの…?わかった、おしっこだ」


「ばーか、違ぇよ」」


くすくす笑い、小さく唇を重ねて、2人で夢の中へ落ちてゆく。
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