魔王と王女の物語
朝目が覚めるとコハクの姿がなく、ラスは目を擦りながら頬を膨らませた。


「私がどこかに行くのは怒るくせに」


「おはようラス。よく眠れた?」


たき火の方を見ると、金の髪が陽光を反射させながらリロイが笑いかけてきて、

グラースとティアラは寄り添うように一緒に寝ていて、リロイの隣に移動するとちゅっと頬にキスをして朝の挨拶を交わした。


「ねえ、コーを知らない?」


「影ならいつものように森の奥に行ったよ。危ないからここに居て」


「でも…ちょっと見て来るね」


ドレスについた草を払いながら腰を上げて森の奥へ消えて行き、リロイの金の瞳はラスの小さく細い背中を追いかけながら、小さく囁いた。


「僕は決めたよ。ラス…悲しいのは一瞬だけだからね」


――その頃森に分け入ってコハクの姿を捜していたラスは、水が跳ねるような音が聞こえて小走りに駆けて、見つけた。


…マントとシャツを脱いで、膝をついて湧水で顔を洗っていて、足音を忍ばせて近付いたラスはいきなり背中に抱き着いた。


「わっ!」


「ん!?こらチビー、勝手にうろつくなって…」


「コーこそいっつも居なくなるでしょ?私も顔洗う」


コハクはラスの金の髪を手で束ねて濡れないようにしてやりながら、木の枝に引っかけていたシャツを肩にかけた。


「風呂に入りたいだろ?そっちにちっせえ泉があるんだけど、温泉にしてやろうか?」


「え、ほんと?入りたい!ティアラたちも呼んでいい?」


「駄目ー。俺とチビが先に入ってからならいいぜ」


――そこでようやくコハクが上半身裸なことに気が付いて1歩後ずさりをした。


「チビ?」


「えっと…やっぱりいい。もうすぐ着くでしょ?早く服着なきゃ風邪を…」


「なーんで顔が赤いんだ?きゃー、チビに襲われる!」


「お、襲わないもん!コーの馬鹿、変なこと言わないで!」


ラスの腕を優しく掴んで引き寄せると上半身裸のままラスを木の幹に押し付けて手をつき、背を屈めて顔を覗き込んだ。


「キスしたいって顔してる。してやろうか?」


「…コーがしたいんでしょ?」


意地っ張り。
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