魔王と王女の物語
リロイたちが駆け降りて行った急な階段をラスを抱っこしたまま上り、

みしみしと軋むいやな音がだんだん大きくなって、さすがに不安を覚えたラスがきょろきょろしていると、


頂上についたコハクが脚で蹴って扉を開けて、凍った聖石を覗き込んだ。


「ふうん、これも凍ったのか。小僧め、悔しがっただろうなあ、あー見てみたかった!」


「コーはこれがなきゃ危険な目に遭わないんだよね?だったらこのままにして早くここを出ようよ」


「んー?おいチビ…その言い方はまるで俺がこの石を怖がってるような言い方に聴こえるぞ。こんなん怖くねえよ」


すぐに石への興味を失ったコハクが背を向けた時――


しゅうう


何かが急速に溶けるよな音がして振り向くと、凍っていた聖石は氷が溶けて本来の美しさを取り戻し、輝いていた。


「コー…どうなってるの?」


「あー、これのせいかあ」


ラスを下ろして自分の胸に手を突っ込み、引きだしたのは…

霧に包まれた村で魔物から住民たちを助けてやった際に謝礼として貰い受けたホワイトストーン。


やけに身体の奥がざわざわしたり頭痛がしていたのは、このホワイトストーンと水晶のせいだろう。


「これが共鳴して氷を溶かしたんだと思うけど…どうするんだよこれ。小僧に渡すか?」


「駄目!それはコーが持ってて。お父様にここを復興してもらえるようにお願いしてみるから!」


「ふうん?お前…王国に戻るつもりなのか?」


「戻っちゃ駄目なの?コーも一緒だよ?」


――ラスの“勇者様”で在りたいコハクは聖石を持って帰り、自分が石を使ってイエローストーン王国の復興に手を貸す姿を想像して…にやけた。


「イイなそれ。じゃあそうすっか。カイの奴も少しは俺を見直すかもしんないしさ」


「大丈夫だよ、コーには私がついてるから。それにコーは独りじゃないし、私が1番コーを理解してるからね。もう“死にたい”なんて思っちゃ駄目なんだから」


…覚えててくれた。

さっき何の気なしに言った言葉を。


「ん、わかった。じゃ、これは小僧たちには内緒な」


「うん」


胸に聖石を押し込んで隠し、ラスを抱っこして頬ずりをした。
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