魔王と王女の物語
「みんなー!魔王様がお帰りになったぞー!」


牛の魔物が大声を上げると、城の中からぞろぞろ出てきたのは…


やっぱり魔物だった。


「ここまで来たってことは完全復活も間近ですね魔王様!」


「まあな。で、お前ら…悪さしてなかっただろうな?


ぽかんとしているままのリロイたちがコハクを凝視し、

抱っこされたままのラスが翼の生えた悪魔のような魔物や、骨なのに空を舞う魔物が怖くてコハクの顔に胸を押し付けていると…


「はい!悪さはしてません!俺たち魔王様に言われた通り人に手は出してないし、ちゃんと守ってます!」


「よしよし。ちなみにこの天使ちゃんが俺の花嫁な。あんまじっくり見るんじゃねえぞ、エロい目で見やがったらぶっ飛ばすからな」


「へえ、このお姫様が…。影に憑いてるんですよね?さあさあ中で休んでください!」


――外見は完全に魔物なのにやけに愛想が良く、城内を案内しようと先導する魔物の後をコハクがついて行くと、リロイが声を上げた。


「影!ちゃんと説明をしろ!」


「ここでか?めんどくせえよ」


「いや、説明するまでラスは置いて行ってもらうぞ」


一瞬コハクの瞳が細くなったが、“良い魔物たち”と位置付けたラスが早く城へ入りたがっていたので、端的に早口で説明をした。


「あいつらは俺がとっ捕まえて実験して改造して“悪”の部分を取り除いた人を襲わない魔物たちだ。ここは俺の実験場ってわけ」


「お前がここの主なのか?聖石はお前が破壊したのか!?」


「聖石はあの塔の天辺にあって街を覆うヴェールを作ってる。ちなみに最初は聖石を壊してやろうと思ってたから結構派手に暴れたな。で、王たちは逃げ出した」


「コー…」


「で、もぬけの殻になったこの街を再建したのは、ほぼあいつらだ。いつの間にか人が移り住むようになって実験しづらくなったけどな」


…魔物が街を再建?

俄かに信じられなかったが、確かに襲ってくる気配は全くない。

花の苗を抱えた魔物の姿はシュールだったが、リロイはティアラの手を引いて背を向けた。


「…街を見て来る」


「勝手にしろ」


人々は魔物を見ても全く恐れていなかった。
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