魔王と王女の物語
城内はおかしなことになっていた。

…人間の服を着た魔物たちが城内中を掃除しまくっているのだ。


「なんか…外見は怖いんだけど服を着てると可愛いね」


「んー、絵ヅラはかなり悪いけどよく働くぜ。人の世話して“ありがとう”って言われるのが嬉しいんだってさ」


「ふうん。…ふふっ」


城内を案内してやっていたコハクはそこで、前から歩いて来る男の存在に…舌打ちをした。


「ちっ、やっぱ居やがったか」


「コハク様、ご帰還お待ち申し上げておりましたよ」


…そう言ってコハクの前で片膝を折った男は、隻眼だった。


左目には眼帯を。そして口には大きなマスクをして、手にははたきを持っている。


銀の長い髪を束ねたまだ若そうなこの男はローブを着ていて、ラスがコハクのシャツの袖を引っ張った。


「コー…誰?」


「あ、こいつ?こいつはオーディンっていうんだ。ストーカーみたく俺について回るヘンタイなんだ。チビ、近寄るなよ、ヘンタイが移る!」


…真性のヘンタイがまともそうな男をヘンタイ呼ばわり。

マスクをしているので表情はわからなかったが、オーディンの眉間にしわが寄り、抗議の声が上がった。


「失礼な。あなたにならこの知識と力を貸しても良いと思って…」


「お前なんか居なくたって力もあるし知識もあるっつーの。ま、俺が居ない間よくここを代行して維持していたな。よくやった」


――隻眼のグレーの瞳が笑んだ。

そして立ち上がるとコハクほどに背の大きなオーディンは、にこにこしているラスの手を握って、魔王、激怒。


「てめえ俺の天使ちゃんに触るんじゃねえよ!」


「私はコハク様の片腕…右腕のオーディンと申します。あなたがコハク様の姫か。これより私はあなたの下僕。なんなりと御申しつけ下さい」


「下僕とかじゃなくってお友達になってね。コー、いい人だね、仲良くなれそう」


「駄目!そいつは俺以上に実験好きのヘンタイなんだから絶対こいつとは2人きりになるなよ!」


それっきりオーディンはコハクを無視してまた掃除に取り掛かり、ラスを笑わせた。


「ふふっ、仲良しなんだね」


「…まあな」


渋々。
< 315 / 392 >

この作品をシェア

pagetop