魔王と王女の物語
リロイたちが城へ戻ってきた時、ラスは食卓の間でふわふわのパンを両手で持って美味しそうに食べていた。

そんな光景を隣に座っているコハクが頬杖をつきながら優しげな眼差しで見つめている。


リロイは固い表情をなんとか和らげてラスの前に小さな紙袋を置いた。


「お帰りなさいリロイ。これはなあに?」


「蜂蜜キャンディだって。ここの名産らしいよ」


ぴんときたラスはすぐさまパンを置いて紙袋を覗き込むと、コハクのシャツの袖を引っ張った。


「コー、これってこの花の?」


「そうだろうな。すでに商品化してたのか」


「私の功績ですよ。私を誉めて下さい」


脇に控えていたオーディンが自慢げに言ったので、嬉しくなったラスはオーディンに駆け寄ると背伸びをして頬にキスをした。

…マスク越しだが。


「あーーーっ!ち、チビっ、ばっちぃからやめなさい!」


「コーにもしてあげる!」


オーディンに殴りかかりそうな勢いで椅子を蹴倒したコハクの前で、受け止めてもらう前提でジャンプしたラスは、

しっかり抱きとめてもらいながらコハクの頬に何度もキスをした。


「はいコー。美味しい?私も食べよ。……美味しいっ、すっごく甘くて溶けちゃいそうっ」


「ふふふふふふ、俺も早くチビを溶けさせてぇ!」


――上機嫌になったコハクがラスを下ろして蹴倒した椅子を立てるとまた座り、むっとした表情のリロイを顎で指した。


「座れよ。あ、ちなみにお前とボインは同じ部屋だからな。他の部屋は掃除してなくってさー」


「僕が…ティアラと同じ部屋!?影、お前何を考えて…」


ラスたちの前に座ったリロイとティアラが顔を見合わせて同時に俯いた。


“ティアラ”と呼んだリロイ。

それに気付いていたラスはにこーっと笑い、口の中のキャンディをからころ言わせながら無邪気に言ってのけた。


「コー、やっぱりリロイとティアラの結婚式の仲人は私たちがやろ?えへへ、今から楽しみっ!」


「…ラス…僕は君だけの白騎士なんだから勘違いしないで。お願いだから」


ティアラが俯き、リロイが唇を噛み締めた。


ラスは何もわかってない。

何も…
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