魔王と王女の物語
コハクとリロイが戻った時はすでにラスたちは食事を終えていて、直立不動の魔物たちを品定めしていた。


「この尻尾可愛い!」


先端がハート形になっている魔物の尻尾をラスが引っ張っていて、嫉妬した魔王がテーブルの上に置いていたナプキンを魔物に投げつけた。


「俺の天使ちゃんに触ってんじゃねえぞ」


「え…、お、俺は触られた側…」


いつもの押し問答が始まってしまったので、ラスは背伸びをしてコハクの耳を引っ張ると囁きかけた。


「コー、ちゃんと改造してあげてね」


「わかったって。あと俺をぎゅってするのを忘れんなよ!」


「行ってらっしゃーい!」


ラスが満面の笑顔で手を振ったので渋々大勢の魔物を引き連れたコハクが部屋を出て行き、

出入り口に立っていたリロイが出て行くコハクたちを無言で見送ると、ラスの隣の椅子に座った。


「久しぶりに話をしようよ。僕らが小さかった頃の話とか」


「うん!だってもうそういう話もできなくなっちゃうんだもんね」


――その言葉がリロイの胸に痛烈に響いた。


…どうして手に入らないんだろう、と何度も考えたけれど、答えが出ない。


旅に出た直後に交わしたキスはラスが単に無知だっただけだとわかっていたけれど…


まさかティアラとの仲を後押しされるなんて。

まさか、本当に魔王の手を選ぶなんて――


「…ラスは小さな頃からお転婆だったから僕は毎日大変だったよ。ほら、ここの傷を見て」


シャツの袖を捲ってラスに見せた右腕の肘には、少し大きめの古い傷が縦に走っていた。

ラスはそれを見て唇を尖らせると、リロイの右腕に抱き着いた。


「リロイの剣で遊んでたら手元が狂って私が斬っちゃったんだよね。あの時は痛かったでしょ?ごめんなさい」


「ううん、いいんだよ」


久々にリロイが心からの笑顔を見せたので、ティアラもグラースも嬉しくなって椅子を引き寄せると4人でラスの数々の武勇伝に笑い声を上げた。


「魔王は一体その時何をしてたんだ?」


「コーは私が小さい頃はずっと影の中に居たの。だから今毎日会えて嬉しい」


…また胸が痛む。

言葉を交わす度に、ずきずきと。
< 322 / 392 >

この作品をシェア

pagetop