魔王と王女の物語
ラスは横になるとすぐ寝てしまう。

リロイはそれを知っていたので、マントを翻しながら背を向けた。


「リロイ」


肩越しに振り返ると、ラスがうつ伏せに寝ころがったまま頬をちょんと突いた。


「おやすみなさいのキスはしてくれないの?」


「…ごめん、もう行かなきゃ」


「ううん、おやすみなさい」


バスの蛇口を捻って止めると部屋を後にして、唇を噛み締めた。

…襲い掛かりそうになる自分を止めるのに必死になっていた。

焦りのあまりにラスを傷つけてしまいそうな自分自身が怖くなって、リロイが救いを求めたのは…


――ぐっすりと寝込んでしまったラスは数時間後に目を覚まして身体を起こすと部屋を見回した。


「遅いな…まだ地下に居るのかな」


部屋を出て薄暗い廊下を歩き、螺旋階段を下りると、コハクが居ると思しき地下に向かって降りて行った。


地下へ降りると大きな鋼鉄製のドアがあって、力いっぱい押してみると少しだけ開いてするりと身体を滑り込ませた。


部屋はダンスホールほどに広く、

よくわからない機械や大きな診察台、殴り書きの紙などが散乱していて、

1番最奥に、椅子に座っているコハクの後ろ姿と傍らに立っているマスク姿のオーディンを見つけた。


「あ、コーとオーディンさんだ!コー!」


声を上げると驚いた様子で振り返ったコハクは…眼鏡をかけていた。


「こらー、ここには来んなって言っただろ?」


「だってコーが遅いから…ねえコー、どうして眼鏡かけてるの?とっても似合ってるよ」


なんだか見慣れないコハクと目が合って恥ずかしくなりながら頬にキスをした。


「もう改造は終わったの?」


「んー、まあな。あー肩凝った。ったくこいつがこき使うから…」


「私のせいですか?お姫様にぎゅっとされたいから頑張ったんでしょう?」


マスクをしているので表情はわからないが、明らかに勝ち誇った感じのオーディンにくるりと背を向けると、コハクが鼻を鳴らした。


「ふん、俺もう戻るから部屋には来んなよ。チビ、約束だぞ、ぎゅってするんだぞ!」


「うん、わかった」


魔王、夢いっぱい期待いっぱい。
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