魔王と王女の物語
私室に戻るまでの間、ラスがしきりに眼鏡に触れてきた。


「俺が眼鏡してるの見たのはじめてだよな」


「うん、コーがいつもと違く見える。大人っぽくて男の人っぽくてなんか…」


俯いて恥らうラスにむらっとしたり、きゅんとしたり。


「俺風呂入るけど、チビも一緒入るか?今ならもれなく眼鏡かけたままで…」


「うんっ、入る!」


即答。

魔王は超足早に部屋へ戻るとラスを下ろしてバスルームを覗いた。


「あれっ、チビがお湯張ったのか?」


「ううん、リロイ。昔話を沢山したの。リロイが前みたく優しくって安心したの」


蜂蜜キャンディを食べながらベッドに座って脚をぷらぷらさせているラスはそれを本当に喜んでいて、コハクは肩を竦めた。


「へえ、そりゃ良かったな。ほらチビ、入るぞ。それ脱がすから立てよ」


平静を装いつつもわくわくしながら、立ち上がって背中を向けたラスのドレスのファスナーを下げた。

灯りをつけていない部屋にぼんやり浮かぶ白い肌と金の髪――


つい見惚れて黙っているとラスが振り返ったので大コーフン。


「よ、よーし、じゃあ行くぞ」


「うん。私先に入ってるね」


この時点でラスは裸同然だったわけで、魔王は眼鏡をくいっと上げつつ暴走する自信がありすぎて、大きく深呼吸。


脱衣所で服を脱いでバスルームに入るとラスはすでにバスタブの中で、コハクの身体中心のやや下をガン見していた。


「おい、どこ見てんだ」


「だって…いやなら隠してていいよ」


「や、別に。俺の身体の中で1番自慢できるとこだしー」


シャワーの蛇口を捻ると…


「ああっ!眼鏡が曇る!」


眼鏡を外してぽいっとラスに投げると今度はラスがそれをかけてみてにこっと笑った。


「ふふっ、似合ってねえよ」


――ラスはコハクの均整のとれた身体に釘付けになっていた。

壁に手をつき、頭を下げてシャワーを被っているコハクは何にも増してセクシーで、

自分の貧相な身体がなんだか恥ずかしくなって脚を抱えてまん丸になるとコハクがバスタブに入ってきた。


「なーにまん丸になってんだよ」


手が伸びる。
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