魔王と王女の物語
コハクの長い腕が伸びてきたので限界まで離れるとまた膝を抱えて座り直しすと魔王がむっとして水鉄砲を飛ばした。


「きゃっ!もうっ、コー!」


「ぎゅってしてくれるんだろ?そのために頑張ったんだからほら、早く!ぎゅってしろ!」


結局無理矢理腕を引かれて抱き寄せられると、胸と胸が密着して、魔王の顔がでれっ。


「あーイイ!すげくイイ!」


「これって私がぎゅってしたことになってないよ?ぎゅっていうのは…」


――ラスがコハクの膝の上で中腰になると、頭に腕を回して抱きしめた。


「!!!ち、チビっ!」


「よく頑張りました。これでみんなもまた頑張って働いてくれるよ」


「……爆発する…。爆発する!」


「?コー、またなんかあたって…」


ラスがお湯の下を覗き込もうとした時、膝からラスを下ろした魔王は耳を真っ赤にさせて背中を向けた。


「コー?」


「堪えろ俺!頑張れ俺!チビ、先に上がってろ。俺ちょっとほら、色々あっから!」


「?うん、わかった。お布団あっためてるね」




……きゅんきゅんきゅんきゅんっ。


いちいちラスの言動に悩まされっぱなしの魔王は、ラスがバスルームから出て行くと天井を仰いだ。


「やべえ…。いやいやいや影のままチビを抱いたりするもんか。もうちょっとじゃんか。耐えろ俺!……収まったかな」


お湯の下を見つつ独り言満載の魔王は濡れた髪をかき上げながら身体を拭いて着替えるとバスルームから出た。


「チビ?どこに居るんだー?ち、び…」


バルコニーの扉が開いていて、白いネグリジェ姿のラスが立っていた。


春風に長い金の髪とふわふわのネグリジェが揺れて、まるで妖精のように美しい。


「チビ」


「川がライトアップされてるの。これも魔法なの?水色とか黄色とかピンクとか…虹みたい!」


身を乗り出して嬉しがるラスの隣に立つと、そこからは水路をライトアップしている街が一望できた。


コハクはラスを背中からぎゅっと抱きしめると、つむじにキスをした。


「ここでずっと一緒に暮らそうな。ずっと永遠に」


「うん。大切にしてね」


誓い合う。
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