魔王と王女の物語
朝目が覚めるとラスはコハクの腕の中に居た。

一緒に寝ていても朝起きるといつもどこかへ行って居ないコハクがちゃんと隣に居て、腕枕もしてくれている。


「コー」


呼びかけたが起きる気配はなく、長い睫毛が綺麗で指先で弄っていると瞳が開いた。


「俺を弄りたいなら別のとこを弄ってほしいんだけど」


指を口元に引き寄せられてぱくっと食いついたコハクの舌使いが艶めかしく、

今度はラスからコハクの耳たぶにぱくっと食いつくと…悲鳴が上がった。


「チビっ、やべえ!朝から爆発する!」


「コー、お腹空いた。ご飯食べよ?」


常に腹空かしの王女はベッドから這い出ると大きく伸びをしてバルコニーの扉を開けて街中香る花の香りを吸い込んだ。


「うわあ、気持ちいい!…コー?どうして起きて来ないの?」


「自主規制してんの。くああ、よく寝た」


ラスが隣に居るとぐっすり眠れる。

ただ、野営している時や一緒に寝ている時に時々ラスの傍から離れたのは、オーディンと連絡を取っていたから。


いつかラスを連れてきてやりたいと思っていた。

その日のために、ずっと準備を続けて来ていたのだ。


「失礼いたします」


2人が出口に目を遣ると、カートを引いたオーディンが入ってきた。

コハクの言いつけ通りしっかりマスクをしていたが目元は緩んでいて、カートの上に乗っているあるものにラスの瞳はきらきらと輝いた。


「それって…金色の花の蜂蜜?」


「ハニートーストと、もう1枚は焼きたてのパンに直接たっぷり蜂蜜をかけて食べて頂こうかと…」


説明している間にラスがハニートーストに飛び付くとぱくっと食いつき、満面の笑みを浮かべてコハクを振り返った。


「おいひい!おーふぃんふゃん、ありあとうっ」


「どういたしまして」


ふわふわのパンに蜂蜜をかけるとまだベッドでだらだらしているコハクの口に突っ込んだ。


「ん、美味いな。ちなみにチビの方がもっと美味いと思うんだけど」


「この卵も食べていいのっ?」


…聞いちゃいない。

だが、ラスの食事風景は毎回見ていて楽しい。


この王女は、至宝だ。

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