魔王と王女の物語
皆はラスが作った鍋料理を綺麗に完食した。

はじめて手料理を振舞ったラスは突き抜ける程上機嫌になり、重たい鍋を抱えると森の中の小川に向かって歩き出した。


「お鍋洗ってくるね」


「あー駄目駄目。チビの手が荒れるじゃねえかよ。そんなの俺がやるし」


ラスから離れない魔王がその細い手から鍋をひょいと奪い取ると一緒に森へ向かう。


…ちらっとラスに目を遣ると…鼻歌を唄いながら目線に気付いて見上げてきた。


「コー、お料理って楽しいね。何か作るって楽しい!」


「今…何か作るのが楽しいって言ったか?俺もチビと早く作りたいんだけど!」


「え、何を?」


「ガキを」


小川の前で腰を下ろすとラスはちょこんと隣に座ってマントを引っ張った。


「赤ちゃんってすぐできるものなの?」


「できる時もある。あと相性も必要」


「全部わかんない。相性ってなに?どうやったら赤ちゃんできるの?」


ラスの質問攻めにどう答えようかと思っていた時――


無防備に少し先を鹿のつがいが歩いていたので何の気なしに見ていると…


ちょうど良いタイミングで雄が雌の上に乗っかった。


「ナイス鹿!あれだよあれ。俺もさあ、あれをしたいわけ」


「?コーはいっつも私を後ろから抱っこするでしょ?」


きょとん顔のラスの腰に腕を回して引き寄せると、頬にキスをした。


「全然違うぜ。チビ、鹿をよく見てみろよ」


「え…え…、あ…」


――違う部分に気が付いた。

一気に顔が赤くなり、もぞもぞと身体を動かすと膝に抱っこされつつ下を見下ろした。


「こらー、どこ見てんだ」


「だって…そういうことでしょ?」


呆然としていると視線に気づいた鹿が逃げて行ったが、魔王は上機嫌。


「いやあ良かった良かった。おしべとめしべ講座をマジでやんなきゃいけねえのかと冷や冷やしてたんだぜ」


急に女らしい表情を見せたラスにむらっときた魔王は唇に小さくキスをするとぎゅっと抱きしめた。


「俺のものになるっていうのは、ああいうこと。怖がるなよ、絶対優しくするから」


怖くなどない。

むしろ、早く…
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