魔王と王女の物語
ラスは綺麗に洗った鍋を手に立ち上がったコハクを見上げた。


「よし綺麗になったな。チビ、行こうぜ。…チビ?」


突然ラスが四つん這いになり、お尻をふりふりして肩越しにちらっと振り返った。


「私がこうして、コーが私に乗っかるの?」


「ち、チビ!出る!!!!」


「何が?どこから?」


「あちこちから!色んなのが!」


鍋を放り出して手で鼻をつまみながらうずくまった魔王のフリーダムな脳内劇場は…この時ラスは裸だった。


ヘンタイ炸裂な台詞を口にした魔王が手をわきわきさせながらラスににじり寄る。


「の、乗っかっていいのか!?」


「駄目」


「えーっ!いけず!小悪魔!焦らし上手!」


――コハクが悔しがる姿が面白くて思わず声を上げて笑うと、

ようやくあちこちが落ち着いた魔王は楽しそうに笑っているラスを無理矢理抱っこすると馬車に向かって歩を進めた。


「俺をからかうとはいい度胸じゃねえか」


「からかってないよ、お城に着くまでは駄目って言っただけでしょ」


「ふん、まあいいや、いい光景見せてもらったから」


…色ぼけ魔王はさっきの光景を反すうしながらにやけまくり。


ラスはそんなコハクの頬を引っ張ったり耳を引っ張ったりしながら遊びまくりつつ、捜しに来ようとしてくれていたグラースと落ち合った。


「何してるんだ?」


「コーの顔がおかしいから遊んでるの」


「ふざけんなよこんな超絶イケメンを捕まえておいて“おかしい”だと?覚えてろよ、俺の城で滅茶苦茶にしてやる!」


…とか言いつつ本気で滅茶苦茶にするつもりだったりするのだが、ラスは腕から降りるとグラースとティアラの間に挟まってお茶を飲み始めてしまった。


「リロイ、美味しかった?」


「うん、すごく美味しかった。他はからっきしだけど、料理はセンスあるかもしれないよ」


「もうっ!コーもリロイもからっきしとか言わないで!努力すればきっと上手になるんだから!」


「ラスの料理か…もっと食べたいな」


白馬の鬣を撫でながらリロイが呟いた。


そんな未来になるために全力を賭すと決めながら――

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