魔王と王女の物語
部屋の中には風が吹き抜け、コハクがベランダに出ていたのを知ったラスは小さな声で呼びかけた。


「コー、そこに居るの…?眠たいよ、もう少し寝てようよ」


「…」


返事は返ってこなかったが、部屋の中に入ってきた気配はしたのでそのままそちらを見ずに左手の薬指に嵌まっている指環を見つめた。



「あのね、夢を見てたの。沢山の子供に囲まれてて…昨日コーと話したでしょ?それを夢で見たの。とっても幸せだったの」


「…」


「どうやったらすぐ赤ちゃんできるかな?毎日してたらできると思う?…また…眠たくなってきちゃった…」



幸せだった。


コハクと一心同体になり、これ以上の喜びはないという幸せに満ち溢れ、近付いてくる足音を待つことができずに瞳を閉じた。



「コー…隣に来て…。もうちょっと一緒に寝ようよ…」



睡魔に襲われ、うとうとしはじめたラスのすぐそばに座り、ベッドがやわらかく沈み、やわらかく髪を撫でてくれた。



「コー…ずっと一緒だよ…。イエローストーン王国の再建……一緒に…頑張ろう、ね…」


…とうとう寝入ってしまったラスの髪を撫で続ける男は、ようやく言葉を口にした。




「…ラス」



ラスはその呼びかけにも起きることはなかった。


――幸せな夢を見ていた。


コハクと子供たちと城中駆け回って追いかけっこをして、笑い声で溢れる夢を。


やっとコハクへの想いに気付いて、やっと結ばれて…これからはもっともっとコハクを好きになるだろう。

もっともっと、コハクを愛して…そして愛してくれるだろう。



「コー…」


髪を撫でる手つきはとても優しかった。


その手が誰のものだか知らずに、眠りに落ちてゆく。


起きたら…

起きたら、コハクと一緒にずっと物語を紡いでいこう。


コハクとの物語を。


コハクと私の物語を――


【完】
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