魔王と王女の物語
白銀の鎧を脱いだリロイの髪をラスが拭いてやっている間…


魔王の機嫌は限りなく斜めになって、身体も斜めに傾いていた。


「チビ、そりゃ過剰サービスってもんだぜ。髪くらい自分で拭かせろよ」


「駄目だよ風邪引くと大変だし…リロイは昔から身体弱いんだから」


「ラス、それは小さい時の話でしょ?僕はもう身体弱くないんだから子供扱いしないでほしいな」


かあっと頬を赤くしたリロイにちょっぴりきゅんとしたラスはシャツに手をかけて胸上まで捲り上げた。


「わっ、ちょ、ちょっとラス!?」


「それも濡れてるし、脱いだ方がいいよ。コー、どうにかできる?」


「火は出せるけどこの中じゃ火事になるぜ。…つかチビに触んな!」


「さ、触ってない!触ってるのは…ラスの…方…」


――コハクの赤い切れ長の瞳にだんだん狂気じみた光が沸いてきて、ベルルがリロイの背中に隠れる。


「そいつが乾きゃいいんだな?この近くの森の中に元魔女が住んでる」


ふいっと窓の外に目を遣ってラスを見ようともしなくなったコハクの機嫌の悪さにラスの手が止まり、

タオルをリロイに手渡してからコハクの隣に移動して真っ黒のマントを引っ張る。


「ねえコー、どうして機嫌が悪いの?コーが怒ってるとやだ…」


「おめーが怒らせてるんだっつーの」


「え、どうして?ごめんなさい、どうしたら機嫌が直るの?」


くいくいと何度もマントを引っ張ってきて、ようやくラスから構ってもらえた子供っぽい魔王は、


ぽんぽんと膝を叩いた。


「抱っこさして」


「うん、わかった」


躊躇なくコハクの膝に横向きになって座り、首に腕を回して抱き着いてくるラスをにやにやしながらリロイに見せつけていい気分になると、


互いに火花を散らしながら顎でリロイに命令した。


「右側の森に逸れろ。道は俺が開けてやるから進め。…あいつにゃ会いたくないんだが仕方ねえ。チビも怖がってるしな」


「…礼は言わないからな」


「気持ち悪いこと言うんじゃねえ。チビ、これでいいんだろ?」


「うんっ!コー大好き!」


ちゅっと頬にキスをされて、


魔王絶好調。
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