魔王と王女の物語
相変らずの豪雨と雷鳴。

特に雷鳴に関してはラスは雷がとにかく苦手で、終始コハクにしがみついては顔を上げずに震えている。


「かーわいいなあ、もっとしっかりしがみつけよ」


「雷が馬車に落ちちゃう!」


「落ちないって。結界も張ってるしちょっとやそっとじゃ壊れねえよ」


御者台で馬を操っているリロイはまたもやずぶ濡れになっていてラスを心配させたが…


獣道もない森の中をコハクの言う通りに進んで行くと、草木が勝手に馬車を避けていて、ラスの目を真ん丸にさせた。


「すごい!これもコーの魔法なの?」


「まあな。魔女は基本的に山奥に住みたがるからもうちょいかかるぞ」


「うん…、きゃあっ!」


轟音が轟いて雷がすぐ近くに落ちて、吸盤が付いているかのようにしがみついているラスの頬をぺろぺろ舐めながら恐悦至極の魔王は、

金の髪を払ってうなじを露わにすると唇で撫でて、ラスにわからないように、そっと魔法をかけた。


――びりりっと電気が走ったかのような感触がしてがばっと顔を上げると、コハクが口角を上げて色っぽく微笑みかけてきて、


痺れた感触のした首を指先で撫でながら膝から降りる。


「なんかぴりってした…」


「チューしただけじゃん。他にも違うことしてほしいわけ?」


小さな丸い魔法陣がラスの首に浮かび、にやりと笑うと…

それまで隅に縮こまっていたベルルが声を上げた。


「着きましたよ」


真っ赤な屋根の小さな家。


小さな窓からは、腕を組んで妖しげに微笑んでいるかつての情人。

あまりに嫉妬深いために連絡を絶ったのだが…もう腹を括るしかない。


「やっぱり爪とか長いの?鼻もとがってるの?」


「いや、見た目は変わんねえけど大体決まって性格が悪いんだ。チビ、何を言われても真に受けるんじゃないぞ、俺が困るからな」


「?うん、わかった」


――リロイが家の前で車を止めて、

コハクはラスが雨に濡れないようにマントで頭からすっぽりと覆うと場所を出て軒先に立ち、ドアをノックした。



「ブレア、雨宿りさせてくれ」


「ふふふ…コハク…久しぶりねえ」



ねっとり。
< 52 / 392 >

この作品をシェア

pagetop