魔王と王女の物語
前方をリロイが守り、その様子は馬車の中からも確認できたが…


好奇心旺盛のラスはそれだけで満足できず、

馬車の中から前の御者台へと移ると新鮮な空気を思いきり吸って両腕を伸ばした。


「気持ちいー!」


「あ、ラス、勝手に出ちゃ駄目だよ」


すぐにリロイがペースを落として、馬車の中でひっくり返って寝転がっているコハクを注意した。


「影、ラスをちゃんと見とけよ!」


「ねえ、レッドストーン王国まであとどの位?」


馬車の上からベルルが覗き込んできたので思わずまた水を掬うような仕草をして掌に乗せようとするが、ぷいっと素っ気なくされてしょげていると…


「ベルル」


「…わかりましたよう」


コハクから諭されて仕方なくラスの掌に乗ると、

急に天気が悪くなった空を見上げながら馬の首を撫でた。


「1日ってところかな。ちょっと出発が遅れたから今日は着きそうにないんだ。レッドストーン王国までは街がないから…どうしよう」


王女を野宿させるわけにはいかず、しかも雷雲がどんどん立ち込めて来て、ものすごい音を立てて雷がすぐ傍の木に落ちた。


「きゃあっ!」


「ラス、中に戻って!」


叫んだ途端、大雨。


会話が聞き取れないほどの豪雨が降り注ぎ、慌てて中に戻ると馬車の窓から外を見た。


――道にみるみる川ができて不安そうな表情になったラスの身体をコハクは引き寄せると、黒いマントで身体を覆い、包み込む。


「すぐ止むだろ」


「すごい雨だね…。リロイも中に入れてあげなくちゃ。リロイ!」


外に向かって叫ぶとドアが開いてリロイが駆けこんできた。


「ごめん、ちょっとだけ乗せてもらっていい?」


「いいよ、リロイびしょ濡れ…。コー、タオルは?」


影に手を入れて、ラスの部屋の私物だったピンクのバスタオルを取り出して渡すと、それで濡れた金の髪を拭いてやっているラスに…


いや、リロイに超嫉妬。


「…俺も外で濡れてこよっかなー」


「駄目!リロイ、風邪引かないでね。鎧も脱いだ方がいいよ」


「うん、ごめん」


甲斐甲斐しい。

ますます苛立つ。
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