魔王と王女の物語
ラスが雨に濡れないことを最優先にしたため、

ドアを開けたブレアそっちのけでラスをまず中へ入れると、マントを落とした。


「コハク…そのお嬢さんはゴールドストーンの…?」


――銀色の長い髪に真っ赤な爪、睫毛が驚くほど長く切れ長でいて、瞳の色は銀色。


ブレアはラスがタオルを手にリロイの身体を拭いてやっている姿を眺め、

それをイライラしながら見ているコハクに吹き出した。


「魔王憑きの王女ラスね。家主の私に挨拶もなしなんてどういう教育を受けているのかしら」


じわりと非難されて、

ようやくブレアの視線に気付いたラスがぺこっと頭を下げ。瞳を輝かせて笑いかけた。


「雨宿りさせて頂いてありがとうございます!」


「チビ、ブーツが濡れてるから脱げ。こっちに来い」


ぱちんと指を鳴らすと、消えかけの暖炉の火が勢いよく燃え上がり、

ロッキングチェアに座らせるとブーツを脱がせてやり、白い脚にキスをした。


「見せつけてくれるわね。そこの金髪の坊やもこちらへ…あら…可愛い顔をしてるわね」


「ち、近付くな」


魔法剣の柄に手をかけながら後ずさりするとブレアは高い声で笑って、

脚を拭いてやっているコハクの顎をつっと上向かせると、顔を近付けた。


「毎夜のように愛し合ったというのに突然連絡もつかなくなってやきもきしたわよ。力を失くした魔女はもう願い下げってわけ?」


「そういうわけじゃねえよ。あ、チビ、動くな。ブレア、あたたかい飲み物をチビに」


チビと呼ぶ声はやわらかく。

リロイの名を呼ぶ時は険しく。


あまりにもわかりやすいコハクの態度に今度はブレアがいらっとしながら暖炉に手を入れて、熱で真っ赤になったヤカンをコハクの手に押し付けた。


「きゃあ、コー!」


「ちっ、相変わらず性格悪ぃな」


一気に水ぶくれになった手を引き寄せたラスがおろおろしたが、

無事な方の手を火傷した方の手に翳して何か口の中で唱えると、徐々に水ぶくれが消えて行く。


「大丈夫なの…?」


「まあな。チビが舐めてくれたらもっと早く治るんだけど」


「うん、わかった」


魔王、大コーフン。
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