魔王と王女の物語
リロイはいつまで経っても躊躇していて、なかなか入って来ない。


「早く。雷怖いからお願い、早く…」


「ラス…こんなのまずいよ。僕は白騎士で君を守るのが使命で…」


近くで雷が落ちて、耳を押さえて縮こまると、ようやくリロイが隣に入ってきてくれた。


「お邪魔します…」


「リロイ、腕枕して」


「え?!」


――一緒にベッドに入るだけで必死に抑えている感情が噴き出てきそうだったのに、腕枕?


少し距離を取って首を振ると、ラスが距離を詰めてきて、数センチの距離で震える声で囁いた。


「お願い…」


「…わかった。今日だけだからね」


長く細い腕を伸ばすとすぐに頭を預けてきて、右手が身体に回ってきてぎゅっとしがみついてくる。


「ら、ラス…あんまりくっつかないで」


「なんで?だってこうしてないと怖いもん。きゃ…っ」


ものすごい轟音が響き、家が揺れた。

がたがたと身体を震わせるラスが無性に愛しくなって、思わず力いっぱい抱きしめた。


「リロイ?痛いよ、どうしたの?」


「…ラス…魔王が君から離れたら、僕は君に…」


顔を覗き込み、緑と金色の瞳が間近でぶつかり合って黙り込んでいると…


いきなりラスが唇にキスをしてきた。


「え…、ラス…!?」


「親愛の証だよ。コー時々してくるの。“仲良しのサインだ”って。リロイと私は仲良しだよね?」


…つまり…

魔王は、ラスともうキスをしたということで…


幼い頃から大好きだったラスのファーストキスがすでに魔王から奪われていることを知ったリロイの嫉妬心に火が付いた。


「こんなことも…された?」


舌を絡めた。


それはまだ未経験だったようで、ラスはうっとりと瞳を閉じた。


「ううん…、されたこと、ない…」


「そっか…。じゃあ時々していい?影には内緒だよ」


「どうして?コーに言っちゃいけないの?」


「うん。僕とラスだけの秘密。いい?」


秘密を作ることと、リロイの表情にドキドキして、頷いた。


「じゃ…もう1回しよ」


「うん」


深い口づけを――
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