魔王と王女の物語
「ラス、そろそろ出発しないと。ほら起きて」


「…うん…」


――布団から出てきて目を擦るラスの姿を入り口にもたれかかり、腕を組みながらイライラ足踏みしては、なるべく優しい声色でラスに話しかけた。


「チビ、今日はどんなドレスがいい?」


「…」


「小僧、出てけ。ぜってぇチビの肌は見せねえからな」


座っていた床から立ち上がると、ラスはいやいやをしてリロイの袖を引っ張った。

またそれが怒髪天にきて、ドンと足踏みをすると、リロイの身体がぎくしゃくとからくり人形のように動いて、本人の意思とは裏腹に部屋の外へと出て行く。


「わ、わ…っ!」


「リロイ!」


「チビ、お前は着替えだ。お姫様なんだからそんな姿でうろつくんじゃねえ」


――とにかくコハクの顔を見たくなくてぷいっと顔を背けると、無理矢理ネグリジェを脱がされて、外気の空気にさらされた身体が寒さで震えてしゃがみこむ。


「寒い…」


「だからこれ着ろって。手伝ってやっから」


この時はじめてまともにコハクと目が合って…逸らしたのは、コハクの方だった。


「…ブレアさんと何してたの?」


「へっ?な、何っていうか…ナニっていうか…」


「意味わかんない。なんで裸だったの?ブレアさんはどうしておっきな声出してたの?」


質問攻めするとぎゅっと背後から抱きしめられて、耳元に熱い息がかかった。


「お前にしたくて、でもできないことをやってた。俺今影だからさ、お前としたくないの。簡単に言うとガス抜き。わかった?」


「私にしたいことってなあに?私にできないからブレアさんでガス抜き?全然意味わかんない…」


くしゃ、と泣きそうな顔をしたので、


きゅんときた魔王はいつも以上にラスの頬をぺろぺろと舐めまくった。


「くすぐったいよ…」


「お前が可愛い顔すっから。なに?見ててイライラした?」


「わかんない。でもなんか…やだった…」


ファスナーを上げて着替えが終わると、

どこかの白騎士のように恭しくラスの手を取って暖炉のある部屋へと移動する。


「わかった。じゃあもうしない」


大嘘。
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