魔王と王女の物語
必死に理性と戦ってみたりしていたのだが・・・

肝心のラスは、こちらの硬い胸が気になって仕方ないのか、何度も自分の胸を押し付けてきて、その感触に夢見心地になっていた。


「あーたまんね。悪戯したいなー」


「コーは悪戯しすぎだよ。駄目だからね」


「えー。だってこれって拷問じゃね?」


にやにやしながらまたラスの胸を見て、お湯の下を見て、

本人は全くそれに気付かず、薔薇の香りのするお湯を手で掬っては香りを楽しんでいる。


「チビ、こっち向けよ」


「え?………んん…」


顔を上げた瞬間強引に唇を奪って、これでもかといわんばかりに舌を絡めて離れると・・・


ぽやんとした表情で頬を上気させて抱きついてきた。


魔王、俄然大コーフン。


「コーのってすごいよね。リロイのとちが……」


「…あぁ?」


ついリロイとの“秘密”を口にしてしまい、コハクの表情が一気に凶悪になった。


「お前…もしかして唇に軽く、とかじゃなくて・・・こんなのしてんのか?小僧と!?」


「ちが、違うよ。今のは言葉のあや……」


コハクの腕から逃れようとしたのだが、がっちり掴まれて離してくれない。


至近距離のコハクの赤い瞳は嫉妬で真っ赤になっていて、そんな瞳を知らないラスはコハクの瞳を覗き込んだ。


「コー…目が真っ赤だよ?」


「ざけんな。小僧とは絶対すんじゃねえ。もうお前、嫌い」


「え…」


――音を立ててコハクが立ち上がり、ラスが呆然としながら見上げる。

さっさと出て行こうとしたので、ずぶぬれのままコハクを追いかけて腕に縋りつき、いやいやをした。


「嫌いにならないで!リロイとしちゃいけなかったの?」


「あれは俺とだけしてればいいつっただろ?ったく尻軽だな」


“尻軽”の意味はわからなかったが、それが悪い言葉だというのはなんとなくわかって、

それでもリロイとコハクを天秤にかけると…コハクの方が勝っている。


「コー、ごめんなさい!」


必死に謝ってくるラスにため息をつき、身体を拭いてやる。


「次はねえぞ。またやったら絶交だからな」
< 83 / 392 >

この作品をシェア

pagetop