魔王と王女の物語
ダンスが終わり、左胸に手をあてて頭を下げたリロイは誉れ高い白騎士団の隊長。


――“勇者様”を見つけたティアラがぽやんとした表情で口を開きかけると…


「おい影、次は僕と代われ」


「ああ?小僧のくせに俺に命令するつもりか?」


「いいよ、踊ろ」


ラスがコハクの手を離し、上がった息を整えながらリロイに抱き着く。


「ちょ、ちょっと休憩しよ」


「ん、何か飲み物持ってきてあげる」


クリスタルでできた鳥の形をした器から赤ワインを注いでラスに手渡すと、豪快に飲み干した。


「おいチビ、後で困ったことになるのはお前なんだからな」


「え、どうゆう意味?」


「朝起きたら裸とか」


「なんで?」


にやにや笑いながら椅子に座り、長い脚を組んで、今度はひとつ椅子を挟んで座っているティアラの大きな胸を鑑賞する。


「母ちゃんに似てよかったな、俺がもっと大きくしてやろうか?」


「ふざけないで。あなたになんか絶対触らせないわ」


「鼻息荒いことで。ふふふ」


眉を潜めた時、リロイとラスが踊り始めた。

さっきのコハクの時とは違ってゆっくり踊る2人ははたから見ていてものすごくお似合いで、


魔王が舌打ちをして、

ティアラが密かにため息をつく。


リロイの表情はどう見てもラスのことが大好きでたまらないという表情で、


そっと魔王を盗み見ると…

魔王もまたリロイと同じような表情をしていた。


「…あなたも一応人間なのね」


「あ?一応じゃえねよちゃんと人間だっつーの」


「不死になって何年経つの?“勇者様”は絶対にあなたじゃないから選ばれないわよ」


「ふん、お前も“勇者様”を信じてるクチか。チビは俺に依存してるから離れねえさ、絶対にな」


絶対的な自信でラスからふいっと視線を逸らすと、

それが目に入ったのか、急にぱっとリロイから手を離し、コハクに駆け寄って肩を揺すった。


「コー?どうしたの?どうして見てくれないの?」


「べっつにー」


「コー、こっち見て」


隣に腰かけて膝を叩くラスを見て、


魔王がにたりと笑った。
< 87 / 392 >

この作品をシェア

pagetop