魔王と王女の物語
「コー…お腹ぱんぱん…」


リロイがフィリアたちと談笑し、ラスは相変わらずぱくぱくと食べ続けた挙句、とうとう音を上げてそう言うと、


ワインを水のように飲んでいたコハクが二の腕を掴んで立ち上がらせ、さっさと出口に向かい始めた。


「どこに行くんだ!?」


「チビを寝かせるんだよ。ガキはよく食ってよく寝ないと成長しねえからな」


「フィリア様ごめんなさい、私…」


しかもワインも結構飲んでいてふらふらで、リロイが仕方なくラスの非礼を詫び、その場に残って魔王に聞かれたくない話ができることにほっとしつつも、

ラスと2人きりにさせるのは、少しいやだったが――


そうしているうちに眠たそうな顔をしてコハクに腕を引かれて部屋を出て行った。


「これで“ぼいーん”になれると思う?」


「たった1日でなれるかよ。俺は少し小ぶりな方が好きだなあ」


「そうなの?」


腰に抱き着かれたまま歩くのはかなり歩きづらかったが、部屋に着いても蝋燭に火を灯さないのはラスの癖。

コハクといつも一緒に居れるように、常に影が沢山できる環境を無意識に作っている。


「チビ、早く脱げよ」


「うん。お腹が膨らみ過ぎちゃってドレスが脱ぎにくいよ」


「俺がチビの腹を膨らませるのも時間の問題だぜ」


「え?どういう意味?もっと食べさせて太らせるって意味?」


「さあな。くくっ」



――コハクはシャツを脱ぎ、ラスよりも早くベッドに入って隣をぽんぽんと叩いた。


「早く来いよ。腕枕してやる」


「やった!コー、やっぱり脱げない…」


「こっち来い」


ベッドに座らせて背中側のファスナーを下げてやり、露わになった細いうなじにちゅっとキスをした。


「気持ちいー。コー、もっとして」


「マジか!じゃあ…頂きまーす」


魔王、絶好のチャンス到来。


うつ伏せになってうつらうつらしているラスの背骨に沿ってキスをして、


さあ次は前だ!…と意気込んだが…


「すぅ…すぅ…」


すでに爆睡していたラスの寝息が聞こえて寝込みの襲撃に失敗し、腕枕をしてやりながら瞼にキスをして、瞳を閉じた。
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