魔王と王女の物語
「ティアラー、開けてー」


部屋のドアの外から聴こえたラスの声に慌ててガウンを着こんで開けると…

ずかずかと上り込んできた魔王と、続いて入って来たラスと、そしてリロイ。


…急に今の姿が恥ずかしくなって、ガウンの下は薄いパジャマしか着ていないのでベッドに駆け寄り、中に潜り込んだ。


「な…、なに?!どうしたの?!」


「ティアラの服を私の影に入れるの。コー、お願い」


クローゼットを開け、何をするかと思ったら両腕を広げて自身の影を大きく作って見せたラスの影に次々とコハクがドレスを放り込んでいく。


「ティアラは胸が大きいから私とドレスの交換できないね…」


「すぐに俺が大きくしてやるって」


「影、余計なことを喋るな。早くしろ」


少し不機嫌なリロイが鞘でコハクの背中を突き、凶悪な笑顔をお返しされながらも凛とした態度で居て、


あれこれ影に突っ込んで終了すると、さっさとコハクが部屋を後にする。


「あれって…魔法なの?」


「うん。コーはなんでもできるんだよ。リロイもなんでもできるし、私だけがなんにもできない…」


そこはちゃんと自覚していて唇を尖らせて嘆くラスの髪の感触を楽しむようにしてリロイが指を潜らせると、ちゅっと頬にキスをした。


「きゃっ」


声を上げたのはラスではなくティアラで、相変らず免疫のないティアラは声を上げた自分が恥ずかしくなって布団に潜り、ドアを指さした。


「失礼いたしました。また後ほど」


リロイが深々と頭を下げたのが見えた。


2人が出て行き、リロイの仕草1つ1つにドキドキしながら髪を整え、身体全体が隠れる白いローブを着て旅支度を整えて食卓の間へ行くと、

すでに父母やラス一行は食事をはじめていて自分の席に着くと、まず神への祈りを捧げる。


「チビ、これ好きだろ?」


「好き!」


「ラス、これは?」


「それも好き!」


魔王とリロイの2人から餌付けをされているかのようにして好物を分けてもらってにこにこ顔のラスに祈りの言葉がすっ飛び、つい笑った。


「ティアラ、あなたも食べなさい」


「はい」


笑みは止まらなかった。
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