魔王と王女の物語
「トラ柄の猫、可愛かったわね」


「うん、でも姫のお話はちょっと…」


夢見る乙女のラスとティアラからしたら結構ショックな話で、逆にコハクは姫の眠る塔へと早く辿り着きたくて仕方がなくてそわそわしていた。


「やっぱ美女なんだろうなあ。寝たふりとか可愛いじゃん。色々できるし」


「色々って…何を?」


「べっつにー」


ラスもティアラもこの手の話は知らな過ぎるほど知らないので、魔王一人が浮かれてにやにやしまくっていた。


すると馬車が止まり、外へ出てみると…

視界一面は茨に覆われて、鉄条網のように絡み合い、誰からの侵入をも長年拒み続けているのが窺えた。


「へえ、これは魔法だな。チビ、下がってろ」


ティアラと手を繋いで離れ、その前にリロイが立って危険から2人を庇うようにして剣の柄に手をかける。


…ティアラは目の前で揺れる純白のマントと金の髪にときめきが止まらず、ラスはどうにかしてコハクが何をしているのか見てやろうと首を伸ばしていたが…


ごう、と熱風が吹いた直後爆発音がして、コハクが手を翳した茨が燃えてなくなった。


「大した魔法でもなかったな。つまんね」


「コー、すごーい!上手上手!」


ラスに誉められて鼻高々になり、コハクが手を引いてまずラスを通した。


「ボインは小僧の手がいいだろ?」


「!その呼び方やめて!」


胸が大きいことがコンプレックスのティアラが本気で怒ると、その会話を聞き逃していたリロイが辺りを注意深く見回しながらティアラの手を丁寧に取って中へと導く。


「僕から離れないで下さい」


「え、ええ…」


――中は、想像していた鬱蒼とした世界ではなく…


人参やじゃがいもと言った農園が広がっていて、ラスたちの脚を止めた。


牛、馬、豚や鶏小屋もあり、コハクとリロイが人影を捜して歩いたが、人1人見当たらない。


「まさか姫が畑を耕してるわけないよな?」


「外から見たら怖いけど、中は綺麗だね。コー、待って」


手を引いてもらいながら螺旋階段を昇ると、ひとつの小さな扉に行き着いた。


「美女であってくれよ」


コハクが呟く。
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